不登校は「年間30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義されていますが、本記事では不登校傾向にある児童生徒も含めて扱っていきます。
不登校児童生徒の学習評価や出欠記録の扱いについては、令和6年の省令改正により柔軟な対応が求められるようになりました。
指導要録は、児童生徒の学びや成長を記録する重要な資料です。不登校児童生徒に関しては、評価や出欠記録の記載に特有の課題が伴い、学校現場での判断が難しくなることも少なくありません。
出欠の扱いや評価不能の場合の記載方法、さらには適切な総合所見の記述に至るまで、細かな配慮が求められます。基本的には管理職(教育委員会)と相談して進めていくことになりますが、本記事では、指導要録の具体的な記載方法に焦点を当て、学校現場で役立つ基準や記載例を解説していきます。
不登校(長期欠席)児童生徒の評定
成績づけの方法
不登校状態にある児童生徒でも、即座に評定1となるわけではありません。小学校や中学校では、学校外の機関(教育支援センター等の公的機関や民間施設のフリースクール等)や自宅等での学習を成績評価に含めることが令和6年の学校教育法施行規則の一部を改正する省令で可能になりました。
高等学校においては、従来より全日制、定時制に通う不登校生徒等は、教育上有益と認めるときは、自宅等で通信教育を受け、単位を取得することが可能となっています。
ただし、在籍する学年よりも下学年の学習を行っていたり、十分な評価材料が提出されていない場合などは認められません。また、フリースクール等の民間施設における相談・指導が個々の児童生徒にとって適切であるかどうかについては、校長が教育委員会と十分な連携をとって判断するものとすることとなっています。
そのため、学級担任や教科担任の一存では決められませんので、管理職とも協議の上で進めていくようにしましょう。
文部科学省
「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について(通知)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00002.htm
通知表(あゆみ)の記載方法
各学期における通知表(あゆみ)は学校裁量で発行しているものであり、出席不足により評価できない場合は 斜線 (/) もしくは CCC 1 の記載となります。学校によって統一されている場合がほとんどなので、学年主任や管理職と確認しましょう。
調査書(中学校→高校)
中学校から高校へ提出する調査書において、長期欠席の生徒で学習の評定ができない場合は、当該の評定欄に斜線を引き「備考」に「長期欠席により評定不能」と記入することがあります。
埼玉県教育委員会 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/222625/16dai15_r6.pdf
指導要録への記載
指導要録は学年の課程修了や卒業認定の関係もあるので「長欠のため評定せず」や「長欠のため記載せず」等とすることは好ましいことではありません。 可能な限り評定も記載するのが基本となります。
出席日数が多いケース
年間30日以上の欠席があっても、出席日数が多い児童生徒の場合は評定の算出が可能ですので、特段問題にはならないはずです。
出席日数が極端に少ないケース
年に2、3日程度しか出席しなかった不登校児童生徒については、高等学校であれば評定以前に出席時数不足となり、評定1が確定するのでわかりやすいです。
議論されるのは、小中学校の場合です。東京都江戸川区の公立中学校の例では、全ての教科の全ての評価・評定、全ての観点について、要録に記載するとなっています。事実上、CCC 1 になると思われます。
福島県教育委員会の資料では、「評定が不可能な場合は、その旨を記入する。評価、評定の欄は空白とせず、「評定不能」「評価できず」「評価せず」等の表記をする。校長の指導を受け校内の共通理解を図ること。」とされています。
いずれにしても管理職(教育委員会)と相談の上で進めていくことになります。
東京都 江戸川区公立中学校 https://edogawa.schoolweb.ne.jp/1320045/download/document/104906?tm=20230603095448
福島県教育委員会 https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/429722.pdf
出欠の記載
出欠の決定
令和6年の省令改正以降、小中学校においては不登校であるからといって、必ずしも欠席というわけではなくなりました。
保健室など別室登校している場合は出席になりますし、市町村の教育支援センターや民間のフリースクール、自宅での学習も一定の要件を満たせば出席扱いが可能です。
児童生徒の居場所 | 指導要録上の記載 |
---|---|
学校(別室登校) | 出席 |
市町村の教育支援センター | 出席扱い可 |
民間施設(フリースクール等) | 要件を満たせば 出席扱い可 |
自宅(ICT等を活用した学習) | 要件を満たせば 出席扱い可 |
民間施設(フリースクール等)での学習を出席扱いにする場合は、校長を巻き込んだ手続きが必要です。

山梨県教育委員会
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/117203/guideline.pdf
指導要録(様式2裏面 出欠の記録)への記載

指導要録の様式2裏面 出欠の記録にある備考欄への記載は、次のいずれかになる場合が多いです。
- 事故欠
- 病欠
- 長期欠席
- 体調不良
児童生徒本人や保護者から「調子が悪い」と連絡を受けた場合は「病欠」や「体調不良」の扱いとなります。その他には、長期欠席と記載したり、病欠以外での欠席は全て「事故欠」で処理するとの考えもありです。
市町村の教育支援センターやフリースクール、自宅での学習を出席扱いとする場合も備考欄への記載が必要です。
<記載例>
出席扱い15日(フリースクール《名称》10日、教育支援センター《名称》5日)
出席扱い5日(自宅においてICT等を活用した学習活動:AIドリル《名称》)
出席扱い20日(フリースクール《名称》15 日、自宅においてICT等を活用した学習活動:AIドリル《名称》5 日)
総合所見及び指導上参考となる諸事項
総合所見には、文部科学省の通知では「観点別学習状況または評定を記載することが困難な場合においても、指導要録の所見欄にその学習状況を文章記述するなど、次年度以降の当該児童生徒の指導の改善に生かすという観点に立った、適切な記載に努めることが求められるものである」と述べられており、不登校中の取り組みを記す必要があります。
不登校傾向にある児童生徒の所見は、別記事で詳しく解説しています。
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