英語教育において、「Scaffolding(足場がけ)」は、生徒が自らの力で学びを進められるように教師が一時的にサポートする指導法です。
足場がけは、生徒の理解やスキルのレベルに応じて段階的にサポートを減らしていくことで、生徒の自立した学習を促すことが目的です。
本記事では、足場がけとはなにかを詳しく解説し、英語教育における足場がけの実践例を紹介します。
足場かけとは
Scaffolding は、元々は建築の際に一時的に用いられる「足場」を意味します。
Scaffoldingを教育用語として最初に用いたのは Wood, Bruner and Ross (1976) です。彼らは、Scaffoldingとは、大人が、子供が自分の努力だけで達成できない目標を達成できるように、タスクの要素のうち子供の能力を超えている部分をコントロールすることで、子供が自分の能力の範囲内にある要素に集中できるようにすることであると述べています。
問題解決やスキル習得についての議論は、通常、学習者が一人で支援を受けていないという仮定を前提としています。社会的文脈を考慮すると、それは通常、モデル化と模倣の例として扱われます。しかし、教師の介入にはこれ以上のものが含まれる場合があります。多くの場合、それには、子供や初心者が問題を解決したり、タスクを実行したり、自分の努力だけでは達成できない目標を達成したりできるようにする、一種の「足場」プロセスが含まれます。この足場は基本的に、大人が学習者の能力を超えているタスクの要素を「コントロール」することで構成され、学習者は自分の能力の範囲内にある要素のみに集中して完了できるようになります。
Discussions of problem solving or skill acquisition are usually premised on theassumption that the learner is alone and unassisted. If the social context is takeninto account, it is usually treated as an instance of modelling and imitation. But theintervention of a tutor may involve much more than this. More often than not, itinvolves a kind of “scaffolding” process that enables a child or novice to solve aproblem, carry out a task or achieve a goal which would be beyond his unassistedefforts. This scaffolding consists essentially of the adult “controlhng” those elementsof the task that are initially beyond the learner’s capacity, thus permitting him toconcentrate upon and complete only those elements that are within his range ofcompetence.
Wood, D., Bruner, J. S., & Ross, G. (1976). The role of tutoring in problem solving. Child Psychology & Psychiatry & Allied Disciplines, 17(2), 89–100.
Scaffolding は一時的な足場なので、段階的に取り外していき、最終的には学習者が自力でタスクを完了させられるようにする必要があります。
外国語教育における Scaffolding
外国語教育における Scaffolding には、3つのレベルがあります(van Lier, 1996)
- macro-scaffolding: カリキュラムレベル、言語を学習するために必要な知識が提示される順序に関する足場かけ (例: 挨拶、続いて日常生活や出来事の説明、その後に過去形の導入)
- meso-scaffolding: クラスの授業計画。徐々に複雑で難しい活動へと移行(例: 語彙学習の後に、リスニング活動を行い、リスニング活動のトピックに関するペアやグループでのディスカッションを行う)
- micro-scaffolding: 教室で行われる教師と学習者、学習者間のやり取り。(例: アクティビティの指示、学習者からの質問、教師の机間指導)
この記事では、中間レベルの meso-scaffolding の例を解説していきます。
リーディング x サマリー の例
- 初期段階: 本文読解前に、新出語彙や文法を指導します。
- 中間段階: 本文の段落ごとに短い要約文を作成させます。
- 最終段階: 段落ごとの要約文をまとめ、本文全体のサマリーを完成させます。
リーディング x リテリング の例
- 初期段階: 本文読解前に、新出語彙や文法を指導します。新出語彙や文法の使い方を練習します。
- 中間段階: 本文の内容に合う写真やイラストを選ばせ、出来事順に並び替えさせます。写真やイラストをペアで描写させます。描写に必要な表現を指導します。
- 最終段階: 写真やイラストを描写する形で、本文内容をリテリングさせます。
リテリングは別記事で詳しく解説しています。
リスニング x ディクトグロス の例
- 初期段階: リスニング前に、新出語彙や文法を指導します。
- 中間段階: 聞き取れた単語や内容をメモさせ、ペアで共有させます。必要に応じて、リスニングのスピードを落としたり、複数回再生します。
- 最終段階: メモを頼りに、聞き取った内容をペアで再現します。
ライティングの例
- 初期段階: 見本を提示し、フォーマットを指導します。
- 中間段階: 穴埋め形式で同様の文章を完成させます。
- 最終段階: 見本を参考にしながら、自力で文章を完成させます。
参考文献
van Lier, L. (1996). Interaction in the language curriculum: Awareness, autonomy and authenticity. London: Longman.
Wood, D., Bruner, J. S., & Ross, G. (1976). The role of tutoring in problem solving. Child Psychology & Psychiatry & Allied Disciplines, 17(2), 89–100.