「逆向き設計」とは? 授業づくりの手順をわかりやすく解説

この記事では、ウィギンズとマクタイによる「逆向き設計」を取り入れた授業づくりの手順を解説していきます。

今まで「逆向き設計」について聞いたことのない人でもわかるように、そもそも「逆向き設計」とはなにか、という点から出発します。

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「逆向き設計」とはなにか

「逆向き設計」とは、ウィギンズとマクタイが提唱するカリキュラム設計理論です。学習計画を立てる前に指導目標を明確にし、評価方法を決めるのが大きな特徴です。多くの教師が学習計画の作成から始め、評価について考えるので、それと比べて逆向きというわけです。

「逆向き設計」の3ステップ

「逆向き設計」にもとづいた授業づくりは、次の3段階から成り立ちます。

これら3つのステップについて見ていく前に、なぜ「逆向き設計」が必要なのかについて、簡単にまとめておきます。

なぜ「逆向き設計」が必要なのか

ウィギンズとマクタイは、作家スティーブン・R・コヴィーの次の表現を引用して、次のように説明しています。

終わりから始めるということは、目的地についてはっきりとした理解をもって始めるということです。つまり、あなたはどこへ行こうとしているのか、今どこにいるのかを理解しており、その歩みは常にゴールへと向かっているということです。

Wiggins & McTighe, Stephen Richards Covey

登山にたとえるとわかりやすいです。どの山に登るか決めずに登山する人はいません。必ず目的地を決め、次にルートやチェックポイントを設定します。

登山中も常に目的地と現在地を照らし合わせながら進みます。授業も同じように計画した方が求める結果が得やすいというのが、ウィギンズとマクタイの主張です。

第1段階:求められている結果を明確にする

第1段階ですべきことは、次の2つになります。

POINT
  1. 設定されているゴールから、理解と本質的な問いを設定する
  2. 鍵となる知識とスキルを書き出す

「設定されているゴール」から「理解」と「本質的な問い」へ

ここでいう「設定されているゴール」というのは、米国であれば州や自治体が定めるスタンダードですが、日本の場合は学習指導要領のイメージです。

「理解」という言葉には注意が必要です。「逆向き設計」において「理解」というとき、それは特別な意味合いを持ちます。ブルームの分類学における理解や旧学習指導要領の「知識・理解」とは異なるので注意してください。

ここで言う「理解」とは、知識の単純な暗記と再生とは違い、転移するような深い洞察です。たとえば、小学校で科学的手法について「理解」した児童生徒は、大学生になって実験をするときでも変数をコントロールできるよう努力し、検証可能性についてもちゃんと議論するはずです。

「本質的な問い」とは、児童生徒が「理解」に達するために発せられる発問です。「理解」は知識とは違うので、教師が情報として与えることができません。児童生徒が自ら思考し、獲得しなければならないものです。

教師も児童生徒も苦労が大きくなりますが、その分「理解」には、すぐに忘れてしまう暗記した知識と違って、永続するという特徴があります。ゆえに学校を卒業してからも実社会で役立つという強みがあります。「理解」と「本質的な問い」については、別の記事にまとめています。

【具体例】スタンダードから理解・本質的な問いへ

実際に具体例を見た方がわかりやすいと思うので、マクタイ&ウィギンズ(2004:124)から引用する形で紹介します。

州のスタンダード(設定されたゴール):

スタンダード4(小学校):科学的なプロセスは、有意味な問いを立て、注意深く調査を行うことでなされる

スタンダードを満たすには、生徒は次のことを理解する必要があるだろう(理解):

  • 科学的手法は、キーとなる変数を恣意的に独立させコントロールする(単なるトライ&エラーではない)
  • 科学的知識は、再現によって検証されなければならない

理解するためには、生徒は次の問いを考える必要があるだろう(本質的な問い):

  • どの程度、科学はトライ&エラーなのか?
  • 科学的理論と常識、強い信念の違いはどこにあるのだろうか?

鍵となる知識とスキルを書き出す

児童生徒が「理解」へと達するためには、「本質的な問い」を発するだけでは不十分ですよね。探求を進めるにあたり、必要になる知識やスキルがあるはずです。

たとえば、先ほどの科学的手法の例だと、次のようになります。

理解するために、生徒は次のことが必要になるだろう(知識):

  • 科学的手法に関連したキーとなる用語

理解するために、生徒は次のことができる必要があるだろう(スキル)

  • 観察されたパターンにもとづいて、推測を立てられるようになる(当てずっぽではなく)
  • 長さや重さ、気温、液体の体積などを適切な用具を用いて測定できるようになる

第2段階 承認できる証拠を決定する

第2段階では、評価方法について検討していくことになります。学習内容に合わせて、評価手法を変えるのがポイントになります。

POINT
  • 理解 → パフォーマンステスト
  • 鍵となる知識とスキル → そのほかの評価
  • 知っておくこと

内容を3つに整理する

「理解」と「鍵となる知識やスキル」についてはすでに触れました。「知っておくこと」というのは、授業で触れておく程度に留める内容で、特段テストするような内容ではない情報が該当します。

実際に、栄養に関する単元で見てみましょう(マクタイ&ウィギンズ, 2004: 78)

理解
  • バランスの取れた食事
  • 「あなたは、あなたが食べたものでつくられる」
鍵となる知識とスキル
  • 米国農務省による食品ピラミッド
  • 食品表示とラベルの読み取り方
知っておくこと
  • 食生活パターンの変遷
  • 食生活に影響を与える条件(高血圧、糖尿病、胃潰瘍)

この例は、小学校5年生〜中学校1年生での指導が想定されているので、食生活に影響を与える条件はたしかに重要だけれども、この学年ではまだ重視しないというような判断のようです。

イメージとしては、こんな感じです。

対応する評価方法を決めていく

学習内容が整理できたら、対応する評価を決めていきましょう。

「理解」はパフォーマンステストで評価することになりますが、ここは馴染みが深い方も多いと思うので割愛します。

鍵となる知識とスキルを評価する際は、評価方法に連続した繋がりがあると考え、次のように並べるとわかりやすいです。

Wiggins & McTighe (1998)

左から「インフォマールなチェック」「観察と対話」「小テストと考査」「論述」「パフォーマンスタスク・プロジェクト」と並んでおり、右側にいくほど複雑で、長期にわたり、実生活に近づき真正性が高くなります。

なお、ウィギンズとマクタイ(1998)は、ありがちな誤解に対する警告として、次のように述べています。

誤解に注意! 私たちが理解の証拠について話すとき、私たちは単元やコースの最中に行われるフォーマル・インフォーマルを問わず多様なアセスメントによって集められた証拠について言及しています。私たちは、学期末考査やフィナーレとしてのパフォーマンスタスクにだけ言及しているわけではありません。むしろ、私たちがかき集める証拠には、観察や(児童生徒との)対話、伝統的な小テストや考査、パフォーマンスタスクやプロジェクト、はたまた生徒自身による自己評価の積み重ねまで含まれます。

彼らはよく写真に例えています。スナップショットよりもアルバムをつくるイメージとのことです。ポートフォリオですね。

第3段階:学習経験と指導を計画する

第3段階では、学習計画を立てます。単元の指導計画をつくるイメージです。主要な学習活動や授業リストをつくります。

“WHERETO” の要素を入れ込む

第3段階は馴染みの多い内容なので多くは記載しませんが、ウィギンズとマクタイは、”WHERETO” (どこへ?)の要素を入れ込むことがポイントだとしています。

W 単元がどこへ(Where)向かっており、なぜなのか(Why)を生徒が理解できるようにする

H 最初に惹きつけ(Hook)、終始注意を惹きつけておく(Hold)

R パフォーマンス・ゴールを達成するために必要な知識とノウハウを生徒に身に付けさせる

E 重大な観念を再考し(Rethink)、進歩を振り返り(Reflect)、作品を修正する(Revise)機会を生徒にたくさん提供する

T 一人ひとりの才能や興味、ニーズを反映するよう、調整されている(Tailored)

O 表面的に網羅するのではなく、深い理解をもたらすよう組織されている(Organised)

(ウィキンズ&マクタイ(著), 西岡加名恵(訳), 2012: 234)

テンプレートにまとめる

「逆向き設計」には、ワークシートがあります。テンプレートとしてまとまっているので、思考が散らかることなく授業設計ができます。

ワークシートは、ほかにもこちらの書籍に掲載されています。

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もっと知りたい方へ

「逆向き設計」は、理解をもたらすカリキュラム設計の一部で、非常に奥が深いです。「理解」と「本質的な問い」については、別の記事で扱っています。

日本語の書籍であれば、京都大学の西岡加名恵氏による書籍が一番頼りになります。特に日本での実践事例を知りたい方には『「逆向き設計」実践ガイドブック: 「理解をもたらすカリキュラム設計」を読む・活かす・共有する』がオススメです。

ウィギンズとマクタイが手がけた書籍についても、西岡氏が翻訳を手がけています。学術書ですが読みやすいです。

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「逆向き設計」に沿った授業を計画する上で欠かせないワークシートについては、こちらの書籍がオススメです。米国の教師が作った指導案の添削事例もあるのでわかりやすいです。英語で書かれてますが、英検2級〜準1級程度あれば読めます。

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本質的な問いについては、こちらの書籍で専門的に扱われています。英語です。英検準1級程度推奨です。

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本質的な問いの解説に加えて、米国での授業の様子がわかるDVDもあります。

「逆向き設計」によって作られた単元集です。具体例を通して学べるのがポイントです。英検1級程度推奨です。

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「逆向き設計」や「理解をもたらすカリキュラム設計」についての解説ではありませんが、パフォーマンス評価やポートフォリオ評価がなぜ生まれたのか知りたい、パフォーマンス評価とポートフォリオ評価のつながりを知りたい方におすすめなのがこちらです。こちらは、国内における教育評価のキーパーソンである京都大学の田中 耕治氏によって日本語に翻訳されています。

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