「英検準2級プラスって、結局受ける意味あるの?」2025年度から新設されたこの級に、受験者のあいだでそんな疑問が広がっています。
結論から言えば、現時点では資格としての評価は準2級とほぼ同じですが、学習効果という点では“受ける価値あり”です。準2級プラスは、2級の出題形式に慣れながら語彙・表現力を伸ばせる「実践的ステップアップ試験」です。準2級と2級のあいだにある“レベルの壁”をスムーズに超える設計になっています。
一方で、準2級に高得点で合格し、履歴書・大学入試など資格を目的として受験する人は準2級プラスはスキップして2級を目指す方が合理的です。準2級プラスはあくまで「英語力を鍛えるための中間試験」であり、「資格の格上げ」にはつながりません。
この記事では、準2級プラスの位置づけ・難易度・2級との違いを整理しながら、「受けるべき人」「飛ばしてよい人」の判断基準をわかりやすく解説します。
英検準2級プラスとは?
準2級プラス新設の目的は2級との橋渡し
「英検 準2級プラス」は、日本英語検定協会が、2025年度より導入する新しい級で、「準2級」と「2級」の橋渡しとして位置づけられたものです。公式ページでは、「準2級と2級の間にある“高い壁”を乗り越えるためのステップ」として設置されたことが明記されています。
実際、これまで英語学習者や英語教師から「準2級合格後に2級合格までに時間がかかる」「2級は“別物”という声が多い」という声が数多く聞かれました。5級から準2級までの各級合格に要する期間はおよそ1年間であるのに対し、準2級から2級に合格するまでには約2年近くかかるというデータも示されています。
この「学習停滞」「モチベーション低下」を防ぐため、準2級と2級の間に“中間ステップ”として準2級プラスが新設されました。学習者が「少しだけ上の英語力を測る」ことによって、小さな成功体験を積み重ね、次へ進みやすくするという狙いがあります。
英検準2級プラスは意味ない?と言われる理由

準2級プラスは「2級への橋渡し」として設けられた新しい級ですが、導入直後から「意味ない」「準2級と何が違うの?」という声も少なくありません。その背景には、資格としての扱いが現時点ではほぼ同じという実情があります。
準2級も準2級プラスもCEFR上の位置づけは同じ
扱いに差が生じない最大の理由は、準2級も準2級プラスもCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)上ではA2レベルに分類されていることです。準2級プラスは確かに2級に近づけるよう設計されていますが、CEFR上では準2級と同じ「A2」扱いです。
これは実用英語技能検定の公式資料ではっきり示されています。準2級、準2級プラスともに合格点は CEFR A2 です。仮に合格点以上を取得した場合でも、どちらも「A2扱い」との表記があります。

そのため、大学入試や履歴書などで資格を提示する際には、「準2級プラス」と「準2級」は区別されず、同一の級として扱われるのが現状です。こうした点から、資格目的で受験を考える人にとっては「意味がない」と感じられてしまうのです。
多くの大学が求めるのは2級以上
現在、多くの大学が英検を何らかの形で入試に活用しています。しかし、実際に出願資格やみなし得点の対象になるのは2級以上に限られることがほとんどです。
ここでは、偏差値50~60程度の経済学部に絞って比較してみます。
- 東洋大学経済学部では、大学入試共通テスト利用入試(前期)で英検スコアを活用できますが、対象となるのは2級以上。準2級や準2級プラスは利用できません。
- 専修大学経営学部では、英検スコアを英語の試験得点に換算できる制度を導入。スコアに応じて80〜100点に換算されますが、こちらも2級以上が条件です。
- 國學院大学経済学部では、英検スコアを英語試験の得点に換算できる制度を採用しています。2級はCEFR B1として70点、準2級はCEFR A2として50点換算となっています(準2級プラスの記載はありませんが、準2級プラスもCEFR A2ですから準2級と同様の扱いが想定されます)
このように、大学入試で実際に評価対象となるのは英検2級以上であることが多く、準2級プラスを取得しても入試上の優遇はほとんどありません。
多くの大学が2級以上を求めるのは、英検2級が「高校卒業程度」とされているためです。準2級プラスは「高校上級(高2〜3年)」、準2級は「高校中級(高1〜2年)」レベルとされています。
ダブル受験はほとんど意味がない
準2級と準2級プラス、準2級プラスと2級のダブル受験は、現状ではほとんど意味がありません。なぜなら、準2級プラスを取得しても、資格としては結局準2級と同じ扱いを受けてしまうからです。
もし、在籍している学校や出願先が準2級プラスを準2級より優遇する措置を行なっていれば受験する価値はあります。ダブル受験は資格の利用方法に合わせて判断していきましょう。
それでも英検準2級プラスを受けるメリット

英検準2級プラスは、資格としての扱いこそ準2級と大きく変わりませんが、「学習を続ける」「次の級に挑戦する」ためのステップアップ試験としては大きな価値があります。特に、準2級から2級のあいだにある“実力の谷”を埋める上で、受けるメリットは十分にあります。
① 学習ステップとして最適な中間目標
準2級と2級の間には、語彙・文法・表現の面で大きな差があります。準2級まで順調に進んできた学習者でも、2級の過去問を解いてみると「いきなり難しくなった」と感じることが多いでしょう。
この“レベルの段差”が原因で、学習のモチベーションが下がってしまう人は少なくありません。準2級プラスは、まさにその中間に位置するため、「もう少しで2級に届くかもしれない」という達成感と成長実感を得やすいテストです。
CSEスコアで見ても、準2級(1728)から準2級プラス(1829)を経て、2級(1980)へと段階的に伸ばせる構造になっており、“ちょっと上の英語力”を測る中間チェックポイントとして最適です。
学習過程のモチベーション維持に加えて、「あとどれくらいで2級に届くか」を具体的に把握できるのも大きな利点です。
② スピーキング・ライティング強化に最適
準2級プラスは、2級の出題形式で、問題をやや易しくした構成になっています。特に効果的なのが、スピーキングとライティングの練習におけるステップアップです。
ライティングは2級と同じ出題形式、語数が少なめ
準2級プラスのライティング問題は次の通りです。
- 意見論述問題(英作文):与えられたテーマ・質問に対して、自分の意見+理由を英文で書く形式。語数の目安は50〜60語程度。(2級は80〜100語程度)
- 英文要約問題:英文1本を読んで、その内容を英語で25〜35語程度に要約する。(2級は45〜55語)
どちらも2級と同じ形式で、語数は少なく、内容もやや簡単になっています。2級の練習問題としては優秀です。
スピーキングも2級と同様の形式
スピーキングでも、2級の形式で問題をやや易しくした様子が見てとれます。インタビュー・カードの本文は、準2級が約50語、準2級プラスが約55語、2級が約60語となっており、準2級プラスが準2級と2級の中間に位置することがはっきりとわかります。
また、イラスト問題は、準2級プラスでは2級同様に3コマのイラストを説明するようになりました。2級ではセリフが1つ、イラストの吹き出しが2つあるのに対して、準2級プラスではセリフが2つ、イラストの吹き出しが1つです。形式は似ていますが、セリフの方が直接的に引用できるため難易度としては下がります。
英検準2級プラスを飛ばして2級を受けるのがオススメな人

英検準2級プラスは、2級へのステップアップに効果的な試験ですが、すべての人に必ずしも必要というわけではありません。学習目的や現在の実力によっては、準2級プラスを受けずにそのまま2級を目指す方が合理的なケースもあります。
① 準2級で高得点を取れている人
すでに準2級で高得点を取れている場合、準2級プラスを飛ばして2級に挑戦しても十分対応可能です。たとえば、ReadingやWritingで満点、またはそれに近いスコアを取れている人は、文法力・構文理解の基礎がすでに2級に近いレベルに到達しています。そのまま2級の学習に進んでも問題ありません。
それとは反対に、準2級にギリギリで合格したようなケースでは、2級の勉強を始めると途端にハードルが高くなったのを感じるはずです。その場合は、準2級プラスを検討するのも良いでしょう。
② 学習目的が“資格取得”中心の人
英検を「学習のステップ」ではなく、「資格としての成果」を重視している人は、準2級プラスを飛ばして2級を狙うのもありです。現状、準2級プラスは資格としての扱いが準2級と同等であり、履歴書や入試の出願資格などで差がつくことはほとんどありません。
また、大学入試などで利用する場合は、CSEスコアだけでなく「2級以上」といった記載がされている場合もあります。その場合は準2級プラスを受けても全く役に立たないことになります。
③ 費用を節約したい人
もう一つの現実的な理由は受験費用の問題です。2025年度時点で、英検の準会場(学校などの団体受験)における検定料は次の通りです。
- 準2級:6,100円(税込)
- 準2級プラス:6,400円(税込)
- 2級:6,900円(税込)
この3つを段階的に受験すると、合計で約1万9,400円の出費になります。実際には対策用の書籍なども購入するでしょうから、さらに高額になります。
学習意欲が高く、すでに準2級を十分に理解している人であれば、準2級プラスを省略して2級に直行する方がコスト効率が良いでしょう。
結論:学習目的なら受ける価値あり、資格目的ならスキップもOK
英検準2級プラスは、「準2級と2級のあいだを埋める」ために設けられた中間ステップです。資格としての扱いは準2級と大きく変わりませんが、学習の継続や2級への準備という観点から見ると、非常に実用的な試験です。
準2級プラスは「意味ない」ではなく「目的による」
準2級プラスを「意味ない」と感じるかどうかは、その人が英検を何のために受けるかによって変わります。
- 学習のモチベーションを保ちたい人
- 語彙・スピーキング・ライティング力を段階的に伸ばしたい人
にとっては、準2級プラスは確実に価値あるステップアップ試験です。
一方で、
- 準2級に高得点で合格した人
- 履歴書に“英検2級”と書きたい人
- 大学入試や資格取得を目的にしている人
にとっては、準2級プラスを飛ばして2級を受ける方が時間と費用の面で効率的です。


















ASAKOROKO
長年にわたり英語教育と試験対策に携わり、英検対策授業やAIを活用したスピーキング練習支援の研究を行っています。学習者一人ひとりが自宅でも効率よく学習を進められるよう、実践的かつ科学的な学習法の紹介を心がけています。