高校教師として初めて担任を持つことは、非常に大きな挑戦です。
生徒とのコミュニケーション、クラス運営、そして保護者対応など、数々の責任がのしかかります。特に、入学式や始業式の準備は、1年間のクラス運営を成功させるための重要なスタートです。
この記事では、初めて担任を持つ高校教師がスムーズにスタートを切るために必要な準備ポイントを、入学式・始業式の準備と合わせて紹介します。
- 生徒の名前を覚える
- 中学校・前任者からの引き継ぎ事項を確認する
- 特別な支援が必要な生徒を事前に把握する
- 生徒の保護者情報を確認し、家庭環境を確認する
- 学校の教育目標を把握する
- ホームルーム経営計画を立てる
- 学年の指導方針を理解し、統一感を持たせる
- クラス運営に関する助言やサポートを受ける
- 入学式・始業式後のホームルームでの指導方針を考える(黄金の3日間を制する)
- 入学式・始業式に向けて準備する
- 保護者との信頼関係を築く(最初の挨拶)
- 保護者とのコミュニケーションを円滑にするための工夫を考える
- 自分自身のリフレッシュを忘れずに計画する
① 生徒の名前を覚える
クラスの状況を把握する第一歩は、生徒の名前を覚えることです。名前を覚えることで、生徒との距離が縮まり、自然なコミュニケーションが可能になります。最初から名前と顔を一致させるのは難しいです。オススメは、先に名前だけ覚えてしまう方法です。出席簿の名前を印刷せず、手書きで書くと覚えられます。
生徒の名前を覚えることは、単に覚えるだけでなく、その背後にある個性や特徴を理解することでもあります。例えば、特定の趣味や特技がある生徒、または目立つ行動をする生徒については、名前と共にそのエピソードを覚えておくと、その後の関係づくりや指導にも役立ちます。
② 中学校・前任者からの引き継ぎ事項を確認する
新しいクラスを担当する際に欠かせないのが、中学校や前任の担任教諭からの引き継ぎ事項の確認です。生徒の学習状況や行動面の特徴、部活動の実績など、さまざまな情報を事前に把握することで、指導の方針を立てやすくなります。
学習面や行動面での特別な支援が必要な生徒については、中学校や前任の担任教師からの情報が非常に重要です。この情報を基に、生徒一人ひとりに合わせた指導やサポートが可能となり、トラブルが発生した際の迅速な対応も期待できます。
引き継ぎ事項を確認する際には、単に記録を読むだけでなく、その生徒の状況を理解し、どう支援していくかを具体的に考えることが求められます。
学習面については、担任としてのサポートで足りるのか、教科担任に配慮を依頼すべき内容があるのか検討しましょう。行動面での問題が報告されている場合は、学年全体での対応策を共有し、一貫した指導が行えるようにすることが大切です。
③ 特別な支援が必要な生徒を事前に把握する
発達障害を抱える生徒や、家庭環境に問題を抱える生徒には、個別に支援が必要か検討する余地があります。場合によっては、担任教師だけでなく、学年主任や養護教諭との連携も重要です。
保護者とも密に連絡を取り合い、生徒の状況を共有することで、学校と家庭が一体となった支援体制を築くことを目指していきましょう。
④ 生徒の保護者情報を確認し、家庭環境を確認する
生徒の保護者情報を確認し、家庭環境を把握することも重要です。家庭環境や保護者の教育方針を理解することで、家庭と学校が連携して生徒をサポートできる体制を整えることができます。
保護者とのコミュニケーションを円滑に進めるためには、信頼関係を築くことが何よりも大切です。学級通信などを通じて担任が自己開示したり、HR経営について説明することで、保護者からの信頼を得ることができます。
⑤ 学校の教育目標を把握する
ホームルーム指導のベクトルを間違わないためにも、学校の教育目標の把握は重要です。明文化された目標は役立たないことが多く、それよりは学校として何を重視しているのかを把握します。進学実績なのか、検定取得や部活動の実績なのか、学校としての指導のベクトルを確認しておきましょう。
⑥ ホームルーム経営計画を立てる
学校の教育目標に沿う形で、ホームルーム経営計画を立てていきます。1年後にあるべき生徒像をイメージして、どのような教育的体験や指導が必要なのか計画していきます。
1年後の姿がイメージしづらい場合は、理想の在校生の姿をイメージしてください。どうすれば理想に近づくのか、いつの段階で何を身につけさせていけばいいのか、そのためにどのような指導が必要なのかを逆算します。
総合的な探求の時間やLHR計画にも関わってくる部分ですので、学年の他の教員とも相談しながら進めていきましょう。
⑦ 学年の指導方針を理解し、統一感を持たせる
学年全体の指導方針を理解し、それに基づいたクラス運営を行うことも重要です。学年主任や他の担任教師と連携し、学年全体で共有する指導方針を把握することで、クラスごとの差異を減らし、生徒たちに一貫したメッセージを伝えることができます。
例えば、学習面での指導方針や進路指導、生活指導において、共通の基準を持つことが、全体の統一感を保つ鍵となります。これにより、生徒たちは学年内でのルールや期待される行動を理解しやすくなり、混乱を避けることができます。
⑧ クラス運営に関する助言やサポートを受ける
初めて担任を務める際には、クラス運営に関する助言やサポートを他の教師から受けることも重要です。例えば、生徒とのコミュニケーションの取り方や、問題が発生した際の対応策について、実際の経験に基づいた助言を受けることで、自信を持ってクラスを運営できるようになるでしょう。
また、学年主任や他の担任教師と連携することで、クラス運営に関するサポート体制を早期から築くことができます。1年間クラスを運営していると、対応の難しい生徒や場面もあります。いつでも頼れるよう、学年団の教師と良好な関係を早くから作っておきましょう。
⑨ 始業式後のホームルームでの指導方針を考える(黄金の3日間を制する)
入学式・始業式後のホームルームは、クラスの方向性を定める重要な時間となります。ここでの指導方針が、一年間を通じたクラス運営の基盤となるため、しっかりと準備をしておくことが必要です。
特に「黄金の3日間」と呼ばれる最初の数日間は、クラスの雰囲気やルールを確立するための絶好の機会です。この期間にしっかりとクラスの基礎を築くことで、後々のトラブルを防ぎ、スムーズなクラス運営が可能となります。
クラスの方向性と生徒への動機づけ
入学式翌日、もしくは、始業式後のホームルームでは、クラスの方向性を決定し、生徒たちへの動機づけを行います。クラスの方向性は、クラス全体がどのような雰囲気で、どのような目標を持って進んでいくかを決めるものです。
担任として、クラス全体の目標や価値観を明確にし、それを生徒たちに伝えることが重要です。例えば、「協力」と「挑戦」をテーマにすることで、生徒たちが互いに助け合い、積極的に新しいことに挑戦する意識を持つように促すことができます。
動機づけのためには、生徒たちが自分自身の成長を実感できるような目標設定をサポートすることが重要です。クラスの目標に加えて、各生徒が個別に達成したいことを話し合い、その実現に向けて具体的なステップを考える時間を設けるのもおすすめです。生徒たちは自分の役割や責任を認識し、クラス全体の目標に向かって努力する意欲を持つことができます。
ルールやマナーに関する指導方針を決める
「黄金の3日間」は、新学期の最初の3日間で、クラスのルールやマナーを確立するための重要な期間です。この期間中に、クラス内での行動規範やルールをしっかりと伝えることで、生徒たちの意識を高め、規律あるクラスを作ることができます。
例えば、挨拶の重要性や授業中の態度、教室内での行動など、具体的な例を挙げて説明することで、生徒たちに明確なルールを理解させることができます。また、ルール違反があった場合の対応についても事前に説明し、全員が理解しておくことで、公平で一貫した指導が可能となります。
最初の3日間で指導しきれなかった、後から全体に指導が必要になった場合はゴールデンウィーク明けがオススメです。黄金の3日間ほどの効果はありませんが、まだまだ指導は通りやすい時期です。
⑩ 入学式・始業式に向けて準備する
行事の詳細を把握し、当日の流れをイメージする
まず最初に、入学式や始業式の詳細を把握することが大切です。行事の日程、開始時間、場所、プログラムの進行順序など、事前に確認しておくべき情報は多岐にわたります。
これに加えて、式典における自分の役割や担当する業務も明確にしておく必要があります。たとえば、新入生への挨拶、保護者の対応、進行役としての責任などが挙げられます。
これらの情報を基に、当日の流れをイメージし、必要な準備を整えておくことが重要です。例えば、式典中に使う台本や資料の確認、式場のレイアウト確認など、細部まで目を配りましょう。
当日のスムーズな進行を実現するためには、リハーサルやシミュレーションを行うと効果的です。
掲示物を準備する
教室環境の整備も重要です。掃除当番表や掲示場所の分類など、生徒たちが一目でわかるように掲示することがポイントです。掲示物は見やすく、整然と配置することが大切です。学年初めにきちんと掲示物を整えることで、生徒たちに安心感と秩序を感じさせることができます。
物品を用意する
教室に必要な物品を用意します。例えば、ゴミ箱の配置やマグネット・画鋲など、細かいところまで気を配ることが大切です。掃除道具や消毒用品などもあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
机を並べ、資料を配布する
生徒数に合わせて、縦何列、横何列で机を並べるのか想定しておきましょう。学年団で話し合って統一するのがおすすめです。
また、入学式に配布する資料は膨大です。当日に配布していると時間が足りなくなるので、可能な限り机の上に並べておくのがオススメです。
提出物回収用のチェックリストを用意しておく
入学式で配布する書類の中には、家庭で記入してもらって後日回収するものも多いです。締切日と回収書類、生徒氏名を記載したチェックリストをあらかじめ作成しておくとスムーズです。
⑪ 保護者との信頼関係を築く(最初の挨拶)
教師として生徒の教育に取り組む際、保護者との信頼関係を築くことは欠かせません。保護者との良好な関係は、学校生活全体を円滑に進め、生徒一人ひとりの成長をサポートするための重要な要素です。
保護者への最初の挨拶は、信頼関係を築くための第一歩となります。保護者に対して、あなたがどのような教師であるか、どのような教育方針を持っているかを明確に伝えることで、安心感を与えることができます。
保護者との連絡手段を早い段階で確認することも重要です。緊急時の連絡方法についても確認し、どのような場合にどの手段を使用するかを明確にしておくと良いでしょう。
⑫ 保護者とのコミュニケーションを円滑にするための工夫を考える
保護者とのコミュニケーションを円滑にするためには、日常的な接触を増やすことが効果的です。例えば、定期的に配布する学級通信や学校ホームページで、生徒たちの学校での様子や行事の案内を伝えることで、保護者に安心感を与えられます。
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「楽らく所見くん」は別の記事で詳しく解説しています。
⑬ 自分自身のリフレッシュを忘れずに計画する
新学期の始まりは、生徒だけでなく、教員にとっても大きな変化の時期です。ベテラン教員であっても、新しい環境に適応しようとする過程でストレスを感じることは避けられません。初担任であれば尚更です。
食事や睡眠に気をつけ、気力・体力ともに回復させていきましょう。友人や同僚との交流もストレス発散になりますが、あまり遅くなると体力的に辛くなります。
入学式・始業式はクラスの門出であって、ゴールではありません。とりあえずゴールデンウィークまでは走り続けられるよう体力を温存しておきましょう。