実は英検1級&英国修士(TESOL/英語教授法)のASAKOROKOです。授業はいつもオールイングリッシュで、かれこれ10年以上になります。
高校だけでなく、中学校でも英語で授業になりましたが、「うちの学校ではちょっと…」「やってみたけど…」という感想をお持ちの先生も多いはずです。
ですが、オールイングリッシュの授業にはコツがあり、コツさえつかめば、誰にでもできるようになります。
なお、オールイングリッシュに限らず、授業のコツ全般や効果的な指導方法については、Udemy の講座で詳しく解説しています。
Chat GPT を用いて授業づくりや考査作成にかける時間を短縮する方法も紹介していますので、非常にオススメできる内容になっています。
オールイングリッシュで授業するコツ5つ【基本編】
POINT①
最初から全部英語にしようとは思わない
オールイングリッシュの授業は、教師にとってもプレッシャーですが、生徒にとっても心理的負担が大きくなりがちです。
英語の使用度合いと生徒が授業についていくのに必要な能力、心理的負担を表にまとめると、次のようになります。
英語の使用度合い | 必要な能力 | 心理的負担 |
生徒の発話も英語のみ | L, R, S | 大 |
配布プリントも英語のみ | L, R | 中 |
教師の発話のみ英語 | L | 小 |
授業のオールイングリッシュ化を急ぐあまり、最初から生徒にも日本語の使用を禁止してしまったり、配布プリントもすべて英語にしてしまうと、心理的負担が大きくなりすぎ、生徒にとっても過剰なストレスとなります。
教師の発話が英語になるだけでも抵抗を感じる生徒は多く、オールイングリッシュでの授業では、いかに生徒の「わからない」を取り除いていくかがポイントになってきます。
まずは、教師の指示が英語でも授業についていけるという安心感を与えるところから始めてみましょう。
POINT②
生徒が知っている表現を使う
教師の発話では、必ず生徒が知っている表現を使うようにしましょう。
例えば「今日の日直は誰ですか?」を英語で言う場合、次のようになります。
例文
❌ Who is in charge of the day duty today?
○ Who says “stand up and good morning” today?
今日「起立、おはようございます」を言うのは誰ですか
どちらも英文としては成立しますが、1つ目の例文では in charge of や duty という言葉が入っており、英検準2〜2級程度はないと理解できません。2つ目の例文は難しい単語もなく、授業で使うのに向いています。
クラスルーム・イングリッシュを使う方法もあります。
中高の先生はこちら。
小学校の先生はこちら。
POINT③
デモンストレーションする
オールイングリッシュの授業では、ジェスチャーやデモンストレーションを積極的に取り入れていきます。
たとえば、ペアを作らせたいときには、実際に1組の机を教師が動かした上で、次のように指示します。
例文
Please move your desks and make pairs like this.
机を動かして、このようにペアを作ってください.
このようにデモンストレーションがあることで、英語が苦手な生徒でもしっかりと授業について来られるようになります。生徒が慣れてきたら口頭の指示のみにしていきましょう。
POINT④
解説ではなく、例示を増やす
オールイングリッシュの授業で解説を多くしてしまうと、生徒は理解できません。オールイングリッシュの授業で必要なのは、解説ではなく、例示です。
例えば、疑問文の導入場面をオールイングリッシュにすると、次のようになります。
例文
I like curry. Question sentence. Do you like curry?
カレーが好きです。 疑問文。 カレーは好きですか?
I run every day. Question sentence. Do you run every day?
私は毎日走っています。 疑問文。 毎日走っていますか?
I play tennis. Question sentence. Do you play tennis?
私はテニスをやっています。 疑問文。 テニスをしますか?
コツは、最低でも3つは例示することです。このように例示することで、生徒は解説なしで文法も理解できるようになります。
POINT⑤
ティーチャートークより生徒の活動を増やす
オールイングリッシュの授業では、教師が話せば話すほど、生徒の負担は大きくなります。そこで、教師の発話を減らして、生徒の活動を増やしましょう。
一番簡単なのは、問題演習です。オールイングリッシュでも、次のように簡単に進められます。
例文
Now let’s do the exercise on page 30. I’ll give you 5 minutes.
では、30ページの練習問題をやりましょう。 時間は5分です。
OK, now let’s check the answer. Ms. Kudo, what’s the answer to number 1?
はい、それでは答えを確認しましょう。 Kudoさん、問1の答えは何ですか?
Good, then, number 2, Mr. Takagi, please.
正解です。では、 問2をTakagiさん、お願いします.
もし、上の例でもまだ難しいと感じるようであれば、次のように簡略化することもできます。
例文
Exercise, page 30. 5 minutes, Go!
練習問題、30ページです。 5分で。始めてください。
OK, check the answer. Ms. Kudo, number 1, answer please.
では、 答え合わせです。Kudoさん、問1、答えをお願いします。
解説も英語でしたい場合は、英語で説明するのではなく、例示するようにします。例示したうえで、生徒から解答を引き出せればベストです。
例文
T: He play soccer? He studies English. He goes to school…So…?
S: He plays soccer.
T: Yes. You need “S”.
問題演習ばかりだと単調になってしまいますが、年間を通して問題演習なしというのはレアなケースだと思いますので、できるようにしておいて損のない技術です。
オールイングリッシュの授業について詳しく知りたい方には、又野 陽子 先生が書かれた はじめてのオールイングリッシュ授業 今日から使える基本フレーズ&活動アイデア (中学校英語サポートBOOKS) が親切でオススメです。
オールイングリッシュでの文法・語彙・読解指導のコツ【応用編】
文法指導のコツ!例示→解説→活動の順で!
例示→解説の順にする
オールイングリッシュの授業で解説からスタートしてしまうと抽象的になりすぎて、ついて来られなくなる生徒が多いです。例示から始めるようにしましょう。
例示から始める文法指導は次のようになります。現在完了進行形の導入例です。
例文
T: Today, we study “have been -ing.”
今日は、have been -ing の学習をします.
T: Ms. Konno, When did you start playing the piano?
今野さん、いつからピアノを弾くようになりましたか?
S: 6-years-old.
6歳です.
T: So, you have been playing the piano for 9 years.
ということは、9年間ピアノを弾いているんですね.
実際の授業では、キーセンテンスを板書したり、もっと多くの例文が必要になると思いますが、このような例示を繰り返すことで、生徒は継続していることについて話す時に have been -ing の形を使うということを少しずつ理解するようになります。
生徒がなんとなく理解してきたあたりで、必要であれば短く簡単な解説を入れます。
例文
You use “have been -ing” to talk about something you continue.
“have been -ing”は何か継続していることについて話す時に使います.
For example, Ms. Konno continues playing the piano for 9 years. So, you say “She has been playing the piano for 9 years.”
たとえば、今野さんは9年間ピアノを続けているので、「彼女は9年間ピアノを弾いています」と言えます。
ちなみに、現在完了進行形など、新学習指導要領で中学校で新たに教えることになった文法事項の教え方については、こちらの書籍でも取り扱いがあります。
問題演習・活動を取り入れる
オールイングリッシュの授業では解説が少ないので、そのままでは十分に理解できない生徒も出てきてしまいます。また、生徒が教師の意図とは違う解釈をしてしまっている場合もあります。そこで、問題演習や活動で生徒の理解度を確認していきます。
プリントにしてもいいですが、次のように口頭で確認する手法もあります。
例文
T: I say, for example, “She plays the piano. She started playing the piano last year.” You say, “She has been playing the piano since last year.”
私が「彼女はピアノを弾きます. 去年から弾き始めました.」などと言うので「彼女は去年からピアノを弾いています」と言ってください.
T: She studies English. She started studying English last year. Ms. Odawara, please.
彼女は英語を勉強しています. 彼女は去年から英語を勉強しています. 小田原さん, お願いします.
S: She has been studying English since last year.
彼女は去年から英語を勉強しています.
語彙指導のコツ!写真・置き換え・場面を駆使する!
写真やイラストを見せる
可能であれば、写真やイラストで見せてしまうことをオススメします。パワーポイントなどを活用していきましょう。
写真やイラストを使わずに説明する方法もありますが、1番のネックはおそらく時間がかかりすぎることです。
導入しなければならない語彙は多いので、視覚的に理解できるものは写真を見せるのが手っ取り早いです。
簡単な単語に置き換える
写真やイラストにしづらい単語の場合は、より簡単な単語に置き換えていきましょう。
たとえば、visit は go で次のように置き換えられます。
例文
She visited a gallery in N.Y.
= She went to a gallery in N. Y.
場面を提示する
場面(コンテクスト)を利用して導入する方法もあります。たとえば、remember は次のように導入できます。
例文
Your mom said, “Go to a supermarket and buy milk, eggs, carrots, onion, natto, salmon, green pepper, cucumber, etc.” You took a memo. Why? To remember.
お母さんに「スーパーに行って、牛乳、たまご、にんじん、玉ねぎ、納豆、鮭、ピーマン、きゅうり、とか買って来て」と言われました. あなたはメモします. どうしてですか? 覚えるためです.
1例だけだと難しいですが、3つくらい場面を用意しておけば大丈夫です。
リーディング指導のコツ!全体から細部へと情報を整理!
全体から細部へとアプローチする
リーディングでは、細部を把握するより、概要を全体的に捉える方が簡単です。細部について問う前に、概要を把握させましょう。概要が把握できていると、細部まで理解しやすくなるというメリットもあります。
概要の把握でもっとも簡単なのはトピックです。まずは何についての英文なのかを考えさせましょう。文章全体だけでなく、段落ごとのトピックを確認していく方法もあります。
例文
What is the topic of the first paragraph?
最初の段落のトピックはなんですか?
概要をつかませるのが目的なので、一言一句神経質になる必要はないでしょう。全体から細部へとアプローチするリーディング指導の方法は、上智大学の和泉伸一先生が薦めている方法でもあり、かなりオススメです。フォーカス・オン・フォームとCLILの英語授業 (アルク選書) に詳しく書かれています。
表などで情報を整理させる
トピックを把握したら、次に文章全体の流れをつかませていきます。表にまとめさせていくと、英語が苦手な生徒でも対応しやすいです。
たとえば、環境問題をテーマにした文章であれば、次のような表を完成させる活動が考えられます。
Topic | Environmental problems in Okinawa |
Problem 1 | |
Problem 2 |
表の項目を用意する際は、次の点に着目すると作りやすくなります。
- 主張と根拠
- 問題と解決策
- 原因と対処
- 因果関係
- 時系列
表以外にも、フローチャートやグラフ、ベン図などにまとめさせるのも効果的です。
まとめ
オールイングリッシュの授業は、最初は生徒も先生も抵抗があるかもしれませんが、慣れてくれば生徒も英語を積極的に使ってくれるようになり、教師としても生徒の成長が感じられて感動する場面が増えます。
さらに詳しく知りたい方には Udemy の講座でも詳しく解説しています。Chat GPT を用いて授業づくりや考査作成にかける時間を短縮する方法も紹介しています。非常にオススメできる内容になっています。