義務教育ではすでに導入されている観点別評価ですが、高校では令和4年度(2022年度)から始まります。
そんなこと言われても、「どうするの?」って感じですよね。義務教育ですでに取り組んでいるとはいえ、高校には高校の事情もあります。
この記事では、次の視点から高校での観点別評価を扱っていきます
- 高校で観点別評価を「現実的に」どう導入するのか
- 教科・教務担当としてどう対応していくのか
- 科目のシラバスにはどう記載するのか
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1. 新学習指導要領で2022年度から何が変わるのか
⑴ 成績の付け方が変わります
評定に加え、観点別評価も指導要録に書きます
2022年度からは、指導要録に評定のほかに、各観点の評価を記入するようになります。
様式2の評定の隣に、「観点別学習状況」という欄が増えています。
ここに各観点の成績を ABC の3段階で記載していくことになります。
⑵ 2022年度から観点は3つになります
評価の観点は4つから3つになります
これまで評価の観点は4つありましたが、2022年度からは全科目共通で、次のように3つになります。
これまでの「技能」「知識・理解」が「知識・技能」になっています。
また、「関心・意欲・態度」が「主体的に学習に取り組む態度」に変わっています。主体的に取り組む態度の評価は、英語を例に説明しています。
振り返りシートについては、別の記事でさらに具体的に解説しています。
「思考・判断・表現」はそのままです。
それぞれの観点についてABCの3段階で評価し、かつ評定を出すことになります。
どのように対応していくのか、シラバスにはどう記載するのか、内規も踏まえつつ見ていきましょう。
2. 従来の内規で対応する場合
⑴ 考査と平常点による縛り
よくあるケースとして、次の内規の下での観点別評価の導入を考えていきます
考査7割、平常点3割で評価する
このケースでは、次のような評価方法が考えられます。
- 考査で、「知識・技能」と「思考・判断・表現」を評価
- 平常点で、「主体的に学習に取り組む態度」を評価
この場合は、考査問題のうち6割を「知識・技能」の問題に、残り4割を「思考・判断・表現」の問題にするといったような対応になります。
⑵ 観点別評価の付け方
数値化して輪切りにしてしまうのが簡単です
例えば、主体的に学習に取り組む態度であれば、平常点に応じて次のように評価できます。
- 20/30点以上でA
- 10/30点以上でB
- それ以下はC
知識・技能、思考・判断・表現についても、考査での得点率に応じて A B C を決めると、生徒も教員もわかりやすいです。
⑶ 評定の付け方
素点+平常点で評定を決め、観点別評価を添えます
想定されるメリットとデメリットを見ていきます。
◉ 考査と評定が一致しやすく、生徒・保護者にとってわかりやすい
◉ 教科によって知識・技能を重視するか、思考・判断・表現を重視するか選択の余地が残る
生徒・保護者にとってわかりやすく、納得感を得やすいというのは高校では大きなメリットです。
なぜなら、高校の成績は、推薦入試や就職、奨学金の申請と使用され、客観的で公平である必要があるからです。
デメリットも見てみましょう。
◉ 科目によって同じ評定でも観点別評価が一致しない可能性がある
◉ 観点別評価が蔑ろにされている感がある
例えば、国語総合では AAA のみ 評定5 なのに、数学I では AAB でも評定5 が出ているというようなケースが想定されます。
このパターンでは、観点別評価は後付けなので蔑ろにされている感がありますが、気にしなければ問題ありません。
3. 内規が改訂されている場合
考査・平常点の割合に縛られない場合の対応について、見ていきます。
⑴ 評定の付け方
義務教育同様に、観点別評価→評定の流れになります
観点別評価の A や B の数を基準に、たとえば、次のように評定を決定していきます。
- AAA→5
- AAB→4
- ABB~BBB→3
- BBC~BCC→2
- CCC→1
メリットとしては、3観点がバランスよく評価されることです。
デメリットも見ていきます。
◉ 同じ考査素点でも、評定が大きく違うケースが想定される
◉ 実際の授業における知識・技能と思考・判断・表現の指導比重と一致するとは限らない
考査素点と評定が乖離すると、何で評定をつけているのか生徒や保護者に疑問を持たれる場面が増えます。
また、実際の指導と評価が一致しなくなると、授業に対して不満を持つ生徒が増えます。
指導と評価の一体化の重要性についてはこちらの記事をご覧ください。
⑵ シラバスへの記載
シラバスに記載すべき事項は、次の3つです。
- 評価の観点
- 評価の素材(考査・小テスト・ノート, etc)
- 評定の決め方
シラバスには、次のように記載してあげるとわかりやすいです。
次の3観点を、記載の評価資料にもとづいてabcで評価します。
◉ 知識・技能:定期考査、小テスト
◉ 思考・判断・表現:定期考査、レポート
◉ 態度:振り返りシート、提出物、授業態度
評定は、各観点の評価(abc)にもとづいて、次のように算出します。
AAA→5
AAB→4
ABB~BBB→3
BBC~BCC→2
CCC→1
年間を通した成績づけ、評定の出し方については、別の記事で解説しています。
4. 内規を改訂する・改訂されている場合の注意点
次の2つのケースについて注意事項をまとめていきます。
- 教務担当として、これから内規を改訂する
- 教科担任として内規が改訂されている学校で観点別評価を行う
⑴ 評価方法を生徒・保護者に伝える
評価方法を変える場合は、周知を徹底しましょう
保護者への周知徹底は、学年や教務部が次のような機会に行うことが考えられます
- 入学時の説明会
- 学年通信
- 学年会・懇親会
- 家庭訪問・個別面談
⑵ 評定の算出方法を確認
評定の算出方法をチェックしましょう!
● 評定の算出方法
各評定の条件を、学校として統一されているのか、それとも教科に委ねられているのか判断する必要があります。
教科に委ねられている場合は、科目によって同じ評定でも観点別評価が一致しない可能性がでてきます。例えば、国語総合ではaaaのみ5なのに、数学Iではaabでも5というケースが考えられます。
⑶ 内規改訂・改訂校勤務の注意点
高校は、義務とは違います
観点別評価は、すでに義務教育で導入されていますが、高校では次の点で注意が必要です。
高校では、成績に客観性・公平性が強く求められる
なぜかというと、高校の評価は義務とは次の点で異なるからです。
- 成績が進路に直結しやすい(就職・推薦入試)
- 成績が金銭に影響する(特待生・奨学金)
成績がすべてではありませんが、特待生や奨学金などでは、数百万単位で金銭が動く可能性があります。
内規を改訂するにしても、改訂された学校で勤務するにしても、義務教育の事例をそのまま高校に取り入れるとトラブルが発生する可能性が高いので注意が必要です。
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書籍で学ぶ
観点別評価は指導要領の様式まで変更された以上、逃れることはできませんが導入には注意が必要です。
児童生徒・保護者にとっても公平で納得のできる評価になるように計画していきましょう。
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