今回のテーマは、新学習指導要領における「指導と評価の一体化」です。
新学習指導要領では、全教科共通で評価の観点が3つになりました。これに合わせて、評価の形も変えていきましょう。
この記事では、指導と評価の一体化とはなにか、というところからわかりやすく解説していきます。
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「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(国立教育政策研究所教育課程研究センター:著)
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1. 指導と評価の一体化について
⑴ 指導と評価の一体化とは?
指導したことを評価することです
「え?それだけ?」と思うかもしれませんが、それだけです。
それだけのことですが、注意が必要です。
なぜなら近年は指導目標も、授業方法も大きく変わってきているからです。
昔と同じようにペーパーテストを重視していると、指導と評価があっという間にバラバラになります。
指導と評価が一体化していないと弊害になりますし、逆に一体化していると大きなメリットになります。
⑵ 指導と評価を一体化するメリット
指導と評価の一体化には、次の2つのメリットがあります。
- 児童生徒が意欲的に授業に取り組むようになる
- 教師の授業改善に役立つ
児童生徒が意欲的に授業に取り組むようになる
これは、指導と評価が一体化していない状況を考えればわかります。
指導と評価が一体化していなければ、児童生徒が授業をどれだけ頑張っても評価に反映されないことになります。
児童生徒側からすると、努力しても報われないと感じてしまいます。
教師の授業改善に役立つ
教師側では、PDCAサイクルを回し、授業を改善するために役立てられます。
指導と評価が一致していないと、授業改善に必要なデータが、正しく得られないので注意が必要です。
⑶ 新学習指導要領で求められる観点
新学習指導要領では、評価の観点が「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つになりました。
これまでの4観点から3観点になっている点に注意が必要です。
それぞれの観点をどのように評価していくのかは、この次で見ていきます。
2. 観点別の評価方法
⑴ 知識・技能の評価
知識・技能をどう評価するのか見ていきます
知識・技能の評価方法としては、次のような手段が考えられます。
- ペーパーテスト
- 観察や実験、実技への取り組み
ペーパーテストは、小テストや一昔前の定期考査のイメージです。
観察や実験、実技への取り組みには、次のような内容が含まれます。
- 顕微鏡が正しい手順で操作できているか
- 観察した内容をスケッチできているか
- グラフにまとめることができているか
- 英語の発音が出来ているか
思考や判断が必要にならず、あくまでも知識として知っているか、スキルとして正しく使えているかという範囲にとどまります。
⑵ 思考・判断・表現の評価
思考・判断・表現は、「主体的・対話的で深い学び」を含む学習活動に対する評価です。
評価方法としては、次のような手段が考えられます。
- 論述やレポート
- 発表やグループでの話し合い
- 作品の制作
- ポートフォリオ
- ペーパーテストで出題方法を工夫
一問一答形式や単に知識の再生を求めるような問題にならないように気をつけましょう。
⑶ 主体的に学習に取り組む態度の評価
「主体的に学習に取り組む態度」は、次の2つの要素から成り立ちます。
- 粘り強い取組を行おうとしている側面
- 粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面
評価方法としては、次のようになります。
- ノートやレポート等における記述
- 授業中の発言
- 教師による行動観察
- 生徒による自己評価や相互評価
「主体的に学習に取り組む態度」と言われるとわかりづらいですが、学習スキルを評価すると思えばイメージしやすいかもしれません。
「主体的に学習に取り組む態度」の振り返りシートは、こちらの記事で取り扱っています。
3. 評価計画をつくる
⑴ 評価資料を決める
観点ごとに、評価資料を決めていきましょう。
評価資料の例
観点 | 評価資料 |
---|---|
知識・技能 | 考査(60点分/60%)・小テスト(40%) |
思考・判断・表現 | 考査(40点分/40%)・レポート(30%)・発表(30%) |
学習に取り組む態度 | 振り返りシート(40%)・ノート(30%)・観察(30%) |
この例では、考査問題のうち、60点分を知識・技能を問う問題、40点分を思考判断を問う問題として、出題することを想定していますが、指導や学校の実情に応じて変更していきましょう。
⑵ 評価基準を決める
次に、観点ごとに評価基準を決めましょう。
80%以上で A
60%以上で B
それ以下は C
⑶ 評定の算出方法を決める
観点別の評価をもとに、評定を算出する方法も決めておきましょう。
評定の例
知識・技能 / 思考・判断・表現 / 態度 → 評定
A / A / A → 5
A / A / B → 4
A / B / B ~ B / B / B → 3
C が 1~2 → 2
すべて C → 1
評定算出の方法については、別の記事でさらに詳しく解説しています。
⑷ 評価の時期を決定する
何を、いつ、評価するのか決めます
評価の時期は、ちゃんと決めておかないと、学年末になって評価資料が足りないということになりかねません。
- 考査(学期末)・小テスト(単元ごと)
- レポート・発表(学期ごとに単元1つ)
- 振り返りシート(学期末に回収)・観察(毎時間)
シラバスにも記載しておくと、児童生徒からの理解も得やすくなります。
4. 児童生徒・保護者の理解を得る
⑴ 評価計画を説明する
年度当初に評価方法も説明しましょう
評価方法はシラバスに記載し、年度当初にしっかり説明しておきましょう。
評価のために頑張る児童生徒も多いので、何を頑張れば成績に結びつくのかしっかり理解させることが重要です。
保護者に対しては、自身が観点別評価を受けた経験がない場合も多いので、丁寧な説明が必要です。
説明する機会としては、次のような場面が考えられます。
- 保護者会で説明する
- 説明資料を作成・配布する
- 家庭訪問や面談で説明する
⑵ 客観性・公平性を担保する
客観的で公平に評価するには工夫が必要です
客観性と公平性を担保するには、大きく次の2つの方法があります。
- 評価回数を増やす
- 評価者を工夫する
◉ 評価回数を増やす
評価する機会が多いほど、安定した評価になります。
スナップショットよりもアルバムを目指しましょう。
◉ 評価者を工夫する
評価者に関して、児童生徒・保護者が問題に感じるのは次の2つです。
- ① 同じテストで採点が厳しい先生と甘い先生がいる
- ② 自分にだけ評価が厳しい気がする
①の場合は、1人の先生がすべての児童生徒を評価することも考えられます。
または、前期はA先生、後期はB先生が評価するというな形式も可能です。
②の場合は、複数の先生で評価づけを行うしかありません。
同時に複数の先生が評価する方法もあれば、学期ごとに採点者を変えるといったやり方もあります。
評価の目線合わせは時間がかかる
研究指定校ではよく、評価の目線合わせが行われます。複数の教員が同時に評価を行い、AやBの基準を共有するというものです。ズレがなくなるまで続ける必要があるので、非常に時間がかかります。
⑶ 評価の内訳を開示する・根拠を残す
なぜその評価になったのか説明できるようにしておきます
教師側では細かく評価していても、開示されないと児童生徒や保護者はわかりません。
観点別の評価だけでなく、その内訳まで開示することで理解が得やすくなります。
また、レポートや作品と評価に用いたルーブリックなどは残しておくべきです。
そうすることで、レポートや作品の総合評価だけでなく、細かな点まで説明することができるようになります。
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指導と評価の一体化は、達成できれば児童生徒も大きな満足感が得られます。授業や課題へのやる気も成績に結びつくと大幅にアップします。
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