【TESOL大学院】オンライン修士課程の選び方・探し方!英語教授法を通信で!

英検1級・英国修士(TESOL/英語教授法)、現役英語教師のASAKOROKOです。MAは100%オンラインで取得しています

この記事では、修士号をオンラインで取得するメリット・デメリット、大学院を選ぶポイント、さらに入試から修了までを解説していきます。

TESOLの修士号を取得するか、オンラインにするかで悩んでいる方の参考になると思います。

※通学制の大学院は別記事で解説しています。

修士号取得後に大学教員を目指すキャリアについては、別記事にまとめています。

この記事のポイント
  1. オンラインのメリットは、対面に比べて、費用を圧倒的に抑えられること。海外の大学院も視野に入れやすい。
  2. オンラインのデメリットは、対面より学びやすさという点で劣る可能性もあること。学習内容が研究なので、実践者には不向き。
  3. オンラインでも対面でも、修士号取得にかけた費用を将来的に回収するのは困難。費用を抑えられ、実践的な学びができるCELTAがオススメ(オンラインで取得可)

CELTAは別の記事で詳しく解説しています。CELTAも100%オンラインで、日本で働きながら取得できます。

オンライン修士課程とは

オンライン修士課程は、日本では「通信制」、英語圏では online もしくは distance learning(遠隔教育)と言われることが多いです。

日本でTESOLを通信で学べる大学院は、以下の2校です。

日本でTESOLを学べる通信制大学院
  1. 名古屋学院大学(年3回スクーリングが必要)
  2. 神田外語大学(100%オンライン)

100%オンラインで完結させたい方は、神田外語大学のほかに、海外大学院もオススメです。

修士号をオンラインで取得するメリット

修士号をオンラインで取得するメリットは、大きく3つあります。

  1. 海外大学院も視野に入れやすい
  2. 学習内容をすぐ実践できる
  3. 費用を抑えられる・仕事を継続できる

1. 海外大学院も視野に入れやすい

オンラインであれば、海外の大学院でも簡単に通うことができます。

通信制であれば、VISAや生活費の心配がないですし、学費も大学によっては日本とそれほど変わりません。

また、次のような、日本と違ったカリキュラムと卒業後のキャリアも海外大学院の魅力です。

海外大学院の魅力
  • 授業のコースワークでも、クリティカル・シンキングが求められる
  • 既存の研究成果をまとめるより、オリジナリティある意見が尊重される
  • 卒業後は英語圏や外資系での就職に近づく

2. 学習した内容をすぐに実践できる

通信制大学院では、働きながら通うことができるため、学んだ内容をすぐに実践できるというメリットがあります。

実践的な課題が出されることもあります。私が受けた授業でも学生の発音を録音して分析するといったものがありました。

最終的に、実践報告やアクション・リサーチ系の修士論文を書きたい方にも、通信制大学院は非常に魅力的です。

3. 費用を抑えられる・キャリアを継続しやすい

オンライン課程では、修士号取得までのトータルでの費用をかなり大きく抑えることができます。

現在の収入を維持できるのは大きなポイントです。週末も残業が続くような職場だと難しいかもしれませんが、一般的な職場環境であればフルタイムで働きながら通うことも可能です。

通信制大学院の学費(日本・海外比較)

学費は、大学院にもよりますが、通学制の課程より、通信制の方が安くなる傾向があります。

日本の大学院(名古屋学院大学・神田外語大学)

名古屋学院大学では、入学金と学費(2年間)の合計が 通学制で1,680,000円通信制で1,280,000円です。その差は40万円です。

神田外語大学では、通学でも通信でも学費は変わらず、2,655,000円です。

海外の大学院

海外の大学院では、大学のポリシーや大学院が所在する国によって大きな差があります。

安い大学では、Horizons Universityが466,000円程度で提供しています。米国の大学院は高額になりがちで、オンラインであっても300万円を超えるケースもあります。

TESOLオンライン修士課程の学費を表にしたので、比較してみてください。

TESOLオンライン修士課程の学費

大学院費用
(現地通貨)
円換算期間Times Rankings
(2023)
米国University of Washington$40,377¥5,250,0001〜3年26
豪州University of WollongongA$40,680¥3,750,0002年201
-250
米国Anaheim University$26,775¥3,400,0002年---
日本神田外語大学¥2,655,000¥2,655,0002〜3年---
英国University of Portsmouth£16,200¥2,600,0002〜3年401
-500
英国University of Birmingham£14,000¥2,250,0002〜3年108
米国Mezzo Online University of Missouri$16,054¥2,000,0002年---
英国University of Lancaster£13,000¥2,000,0002年122
英国University of Leicester£10,500¥1,600,0002年6ヶ月163
英国University of Stirling£9,975¥1,594,0002年6ヶ月351
-400
日本名古屋学院大学¥1,280,000¥1,280,0002年---
NZVictoria University of WellingtonNZ$9,174¥1,126,0001〜2年401
-500
仏国Horizons University€3450¥466,0001年---

※年額ではなく、入学から修了までトータルでの学費です。円換算は概算です。諸経費は含めていません。

通学制大学院との学費比較

参考までに、通学制大学院の学費も掲載しておきます。

通学制TESOL修士課程の学費

大学院費用
(現地通貨)
円換算期間Times Rankings
(2023)
米国Michigan State University$58,995¥7,500,0001〜2年106
英国University of Leeds£22,250¥3,500,0001年128
日本神田外語大学¥2,655,000¥2,655,0002年---
日本国際教養大学
(専門職大学院 英語教育実践領域)
¥1,800,000¥1,800,0002年---
日本名古屋学院大学¥1,680,000¥1,680,0002年---
日本上智大学¥1,640,000¥1,640,0002年1501+
日本広島大学¥1,353,600¥1,353,6002年801
-1000
日本大阪大学
(人文学研究科 外国学専攻)
¥1,300,000¥1,300,0002年251
-300

※日本の大学院については入学金を含めています。米国大学院は単位制で、学生によって修了するスピードが変わります。英国は学期制です。どちらも現地での滞在費や諸経費は含めず、International Studentの学費のみを掲載しています。

ランキングは参考程度に
ランキングは、大学自体のランクであり、TESOL大学院に限定されるものではありません。例えば、ランク外でも、アナハイム大学の教員には世界的に著名なTESOL研究者が多いです。

オンライン修士課程のデメリット

私が実際に感じた、オンライン課程のデメリットは、次の3つです。

  1. 家族や職場の理解が得づらい
  2. 講師によってはレスポンスが遅い
  3. 研究手法によっては身につけづらい
  4. 費用を回収できない

1. 家族や職場の理解が得づらい

オンラインであっても大学院なので、今までより忙しくなります。私の通っていた大学院では、1週間に約7時間の学習が目安として提示されていました。ただし、これはネイティブスピーカー向けです。実際には、1週間に10時間程度は見積もっておくことをオススメします。

さらに、課題の提出時期はもっと時間が必要になることが想定されます。休日に部活動などが立て込んでいたりすると、難しいかもしれません。

在学中は、家にいる時間の多くを課題に費やすことになります。家族や周囲の理解も必要です。ですが、100%オンラインで修了するプログラムの場合、いくら周囲に事前に伝えていても、大学院へ通っていることが認識されづらいです。

周囲の理解を得るという意味では、通学がある方が取り組んでいる様子が目に見えてわかりやすく、理解を得やすいかもしれません。

2. 講師によっては、レスポンスに時間がかかる

修士論文に限らず、通信制大学院では教員と連絡を取りながら進めていく機会が多くなります。基本的にはメールでのやり取りになりますが、先方のレスポンスが悪いと致命的です。

私の場合は、修士論文以外を担当した教員のレスポンスが悪く、約1週間を要しました。こうなると課題の締め切り2ヶ月前にアウトラインを送り、1ヶ月前に下書きを送ったとしても、レポートの完成はいつもギリギリでした。

一方で、修士論文を担当してくださった先生はレスポンスが非常によく、夜にメールを送ると、時差も手伝って、次の日の朝には返ってきていました。このあたりは大学院によるというよりは、人によるのかもしれません。

3. 研究手法によっては、身に付けづらい

音声学や会話分析のような研究手法は、通信制よりも対面でレクチャーを受けた方が身に付けやすいと感じます。

修士論文のテーマにするつもりだったり、博士後期課程への進学などを考えている場合は、研究手法を学ぶセミナーは日本でも開かれていることが多いので探してみましょう。

4. 費用を回収できない

オンラインに限ったことではありませんが、修士号を取得したからといって給与が上がるケースは稀です。基本的には、学位取得にかけた費用は回収できないと考えておきましょう。

学費に加えて書籍の購入なども費用がかさみます。最低でも、年間で10万円程度は見積もっておくのがオススメです。

正直、個人的には、費用を抑えられ、実践的なトレーニングができるCELTAの方がオススメです。CELTAもオンラインで取得できます。

オンラインの大学院を選ぶポイント

費用や期間以外で、押さえておくべきポイントを解説していきます。

ポイントは、次の4つです。

大学院選びのポイント
  1. 学習内容(TESOL vs. 応用言語学)
  2. 修士論文の有無
  3. スクーリングとWebセミナーの有無(時差)
  4. 中高専修免許状の取得

教育内容 TESOL vs. Applied Linguistics 

大学院を選ぶ際は、コース名だけでなく、カリキュラムも確認しておきましょう。

TESOLは応用言語学の下位分野です。コースによっては、異文化コミュニケーションや社会言語学、言語政策など応用言語学の範囲を学習する可能性があります。

TESOLに専念したいのか、周辺分野も比較的幅広く学べる方がいいのか考えておきましょう。

修士論文の有無

海外の大学院では、修士論文(dissertation)は必ずしも書かなければならないものではありません。論文を書くコースもあれば、単位を集めて修了するコースもあります。研究者を目指す場合は書くべきですが、実践家を目指す場合は必ずしも必要ではありません。

修士論文の目安としては英文で10,000字程度です。A4にダブルスペース(1行あけ)で、50枚程度です。

なお、研究職を目指す場合は、プログラム自体もtaughtやeducationではなくresearchと明記されているものをオススメします。

スクーリングとWebセミナーの有無(時差)

通信制であっても、必ずしも100%オンラインで完結するとは限りません。スクーリングがどの程度求められるのか確認しておきましょう。名古屋学院大学のスケジュール例では、1年次に年3回のスクーリングが予定されています。

スクーリングでは、カリキュラムや学習についてのガイダンス、修士論文に向けた指導を手厚く受けられるというメリットは大きいですが、大学まで距離があったり仕事が忙しい場合は、金銭的・身体的な負担も大きくなります。

海外大学院を選択する場合は、先述したように、スクーリングからは解放される確率は高いですが、時差とWebセミナーに注意が必要です。

職場のALTが米国大学院の通信制課程に通っていましたが、深夜や日中に仕事を休んでセミナーに参加しなければならないようで、大変そうでした。

日本の大学院、もしくは、日本時間では仕事が終わっていて、大学所在地では勤務時間となりやすいイギリスの大学院がオススメです。

中高教諭・専修免許状

専修免許状の取得を目指す場合は、日本の大学院をオススメします。日本の大学院であれば文部科学省の指定を受けている可能性が高いです。一方で、海外大学院だと修士号は取れますが、専修免許状には直結しません。

TESOLオンライン海外大学院の探し方

TESOL修士号をオンラインで提供する海外大学院は、無数にあるので網羅しきれませんが、参考になるページを紹介していきます。

Distance learning Masters Programs in TESOL 2022

国を問わず、オンラインでTESOL修士号を取得できるプログラムがデータベース化されています。ただし、網羅しているわけではありませんし、掲載料を支払っている大学院のみが紹介されている可能性もあります。

紹介されている大学院が必ずしも推薦されているわけでない点には留意しなければなりませんが、複数のプログラムを簡単に比較できるので、まず覗いてみて、雰囲気を掴むのにオススメです。

Top 25 Affordable Master’s in TESOL Online Programs(米国)

米国の大学院で、比較的学費が抑えられているプログラムを紹介しています。学費が高い順に掲載されています。

英国のリストもどうぞ。

【英国】13 Universities offering Masters Degrees TESOL Online/Distance Courses in the UK

現地学生向けの学費が掲載されている可能性があります。留学生は別になるケースが多いので注意しましょう。

大学院入試に向けた準備

出願要件① 英語力 IELTS 6.5-7.0

名古屋学院大学では英語力について明確な基準は示されていませんが、神田外語大学では IELTS 6.5 以上 もしくは TOEIC 800, 英検準1級以上が求められています。

また、海外の大学院ではIELTS(academic)で6.5~7.0以上のスコアが求められるのが一般的です。英検1級でIELTS7.0相当とされますので、ハードルとしては高いですが、日本人にも不可能ではありません。

出願要件② 指導経験と学部での成績

海外大学院では、1年以上の指導経験が求められる場合があります。また、学部での成績や学習分野について要件が示されている場合があります。

ただし、これらについては大学院ごとに微妙に異なりますので、entry requirements を確認するようにしましょう。

学部で英語教育以外を専攻した場合は、CELTAなどで経歴を補強するのがオススメです。学部卒業から時間が経過してしまった場合にも有効です。

▼CELTAはオンラインで、働きながらでも取得可能です。

提出書類① 志望理由書(Essay/Statement of Purpose)

志望理由書は、名古屋学院大学では所定様式で日本語での提出になっています。神田外語大学では、英文で500字で、テーマが設定されています。2022年秋入試の要項では “How would this program help you accomplish your professional goals?” となっています。

海外の大学院では英語で1,000~2,000字程度で提出が求められることが多いです。英文での1,000字は、日本語に換算すると約2,000字です。A4用紙にダブルスペース(1行開け)で2ページ程度です。

参考までに構成と文字数の例を掲載しておきます。

構成内容文字数
導入略歴・現在の取り組み100-200
本論大学院で学びたいこと600-700
結論大学院での学びをどのように活かしていくか100-200

提出書類② 推薦書

名古屋学院大学では求められず、神田外語大学では Optional となっています。

一方で、海外の大学院では1~2通の推薦書が求められる場合が多いです。大学時代の教員職場の上司などに書いてもらうのが一般的です。

学部卒業から時間が経過していたりすると、推薦状で悩みますよね。CELTAを受講して、講師に依頼する方法もありますよ。私も1通はTESOLの講師からもらって出願しました。大丈夫でした◎

オンライン大学院での学習

米国&英国のカリキュラム

カリキュラムは、米国が単位制で修了までに36~37単位程度が必要になることが多いです。1単位は、1コマ(1時間/週)に相当します。3単位であれば、週に3時間学習するイメージです。

英国は学期制です。日本の小中高をイメージするとわかりやすいと思います。基本的に前期・後期の2期制で、学期終わりにレポートを提出します。

【米国】Anaheim University (TESOL)2年間
– Second Language Teaching and Learning 4 units
– Grammar for Language Teachers 4 units
– Discourse Analysis for Language Teachers 4 units
– Second Language Acquisition 4 units
– Classroom Management and Observation 4 units
– Second Language Classroom Research 4 units
– Classroom-Based Evaluation 4 units
– Second Language Curriculum Development 4 units
– Research Methods in Language Learning 4 units
– Research Portfolio OR Thesis 8 units

【英国】University of Leicester (TESOL & Applied Linguistics)2年6ヶ月
1年前期
– Second Language Teaching(15 credits)
– Second Language Learning(15 credits)
1年後期
– Grammar Awareness(15 credits)
– Phonology and Pronunciation Teaching(15 credits)
2年前期
– Language in Society(15 credits)
– Discourse Analysis(15 credits)
2年後期 以下から2つ選択(合計30 credits)
– Teacher Education
– Language Testing and Assessment
– Course and Syllabus Design
– Materials Design and Development
– English for Specific Purposes (ESP)
– Technology Enhanced Language Learning
– Intercultural Communication
– Corpus Linguistics: Language Learning and Teaching
3年前期
– Dissertation(60 credits)

オンライン修士課程での学習の流れ

ここからは、実際に履修した経験をもとに、オンライン修士課程での学習について解説していきます。

① プラットフォームにアクセス

オンライン学習プラットフォームを利用する形式でした。Blackboardなど、Google Classroomのようなバーチャルクラスが大学院によって用意されていると思います。 

② リーディング

授業ごとに100ページ程度のレジュメが配布されました。全部丁寧に読み込む必要はなく、あくまでも授業分野の概要を知るためのツールという感じでした。

リーディングリストも配布されました。こちらの方が役立った印象です。

③ ディスカッション

1つの授業あたり、500文字程度のエッセイを掲示板に投稿する形式でした。ほかの学生が書いた内容にも返信が求められました。採点はされず、合否のみが判定される形式でした。

④ レポート

授業1つにつき、3,000字のレポートが1つ課され、成績はこのレポートが全てでした。締め切りの2ヶ月程度前に担当教員にアウトラインを提出し、1ヶ月ほど前に下書きを提出しました。

おそらく大学院で一番恐ろしいのは、授業のテーマに沿っていない内容でレポートを仕上げてしまうことです。内容がズレているとF(不可)評価です。テーマからズレている場合は、指導教官から修正の助言がもらえました。

オンライン課程で文献はどうする?

英文の書籍は、多くがネット上で利用可能です。

学術論文も大学アカウントで読めますし、PDF化されていないものは、大学図書館に依頼して数日中にメールで送ってもらえました。

和書など大学図書館に蔵書がない場合でも、ほとんどの場合はAmazonで手に入ります。

和文の学術論文は地元図書館から国立国会図書館に複写依頼が可能です。このあたりの対応力は、図書館の規模より司書の実力によるところが大きいです。小さな図書館でも資格のある司書であればかなりの確率で複写を手に入れてくれます。

現場で指導したい先生にはCELTA/DELTAがオススメ

正直に言って、大学院はオンラインであっても費用が高額になりがちです。しかも、修士号を取得したからといって給与があるケースは稀です。基本的に回収は不可能です。

かつては、英語教師のスキルアップ = 大学院でしたが、現在では他の選択肢も用意されています。しかもオンラインで出来ます。

例えば、ケンブリッジ大学英語検定機構認定のDELTAやTrinity DipTESOLも大学院レベルです。これらは、研究よりも実践に重きが置かれており、第一線の現場で指導を続けたい先生に向いています。費用も約50~60万円と大学院に比べれば抑えられます。

取得にはCELTAやTrinity CertTESOLが必要です。どちらも100%オンラインで取得でき、CELTAは開講数も多いのでスケジュールを合わせやすいです。まずはCELTAから始めてみるのも◎