英語多読は効果なし? 意味ない? やり方をプロが解説

英検1級、英国修士(TESOL/英語教授法)のASAKOROKOです。

この記事では、多読は英語学習において「意味ない?」「効果なし?」といった疑問に答えていきます。 

多読は膨大な時間と労力をかける学習法なので、どれくらい読めば、どの程度の成果が見込めるのかも気になるところです。

第二言語習得研究に基づいて、英語多読のデメリットやメリット、多読がオススメの人とそうでない人、効果的なやり方を解説していきます。

この記事の内容
  1. 英語多読は効果なし? 意味ないって言われるのはなぜ?
  2. 英語多読の価値とは(メリット、効果について)
  3. 多読がおすすめの人とそうでない人
  4. 多読の効果的なやり方
  5. 多読教材の選び方

英語多読は効果なし? 意味ないって言われるのはなぜ?

多読は効果がない、意味がないと言われるのは、次のようなデメリットが原因となっています。

多読のデメリット
  1. 学習する単語はランダムで、使用頻度の高い語から学習できない
  2. 語彙習得を目標とする場合は、年間100万語(1日10ページ程度)の読書が必要(Nation, 2001)
  3. 文法は多読より文法問題に取り組んだ方が効果的である(木村, 2018)
  4. スピーキングの向上は期待できない
  5. 会話表現の習得は期待できない

多読で学習できる語はランダムです。使用頻度の高い順に学習するといったことが難しいです。しかも、多読のみで語彙を網羅しようとすると年間100万語(1日10ページ)の読書が必要です。そのため、効果を感じづらいのも事実です。

実際、こんなツイートもありました。

たしかに週1くらいだと成果は感じられないかもしれません。

多読はやる価値がないのか?

デメリットもある多読ですが、第二言語習得の研究では、次のようなメリットもあるとされています。

多読のメリット
  1. リーディング速度の向上 (Iwahori, 2008; Kusanagi, 2004)
  2. 言語能力の総合的な向上(Bell, 2001; Sheu, 2003)
  3. 読書習慣の向上(Cho&Krashen, 1994)
  4. モチベーションの向上(Takase, 2003; Elley, 1994)
  5. 語彙力の向上(Horst, 2005; Nation, 2001)
  6. ライティング力の向上(Janopopulous, 1986)
  7. リーディング, リスニング, ライティング力の向上(Elley & Mangubhai, 1981)

この中でも特に着目したいのが、リーディング速度の向上です。読解速度は、読めば読むほど早くなります。

子ども時代に、やたらと漫画や小説を読むのが早い友達っていませんでしたか? 必ずと言っていいほど、大量の本を読んでいます。

英語でも同じです。読めば読むほど、読むスピードは早くなります。試験などで読解にかける時間が足りない人や仕事で英文を読み込む機会が多い方にはオススメの方法です。

実体験のツイートも紹介しておきます。

先ほどの方と異なるのは、中学2年から高校3年までなので、5年続けたという点です。かなりの量を読みこなしたことが推測できます。仕事もリーディングにフォーカスしているようなので、成果を感じやすかったかもしれませんね。

多読がオススメの人とそうでない人

多読がオススメの人

多読がオススメなのは、リーディング速度を伸ばしたい方です。

私自身、大学生の時に Graded Readersで、米国滞在時と英国大学院時代に多読をしています。Graded Readersは、多読用にレベル分けされている教材です。

実際、大学生で初めて多読を始めた段階で、読解スピードは上がりました。一字一句読まなくても、意味が取れるようになっていきました

さらに、米国滞在時は目に見えてリーディング速度が上がりました。その場で多くの英文に目を通さなければならない状況が多く、タイム・プレッシャーの中で読んでいたことが要因かもしれません。大学院時代も同様です。

多読がオススメではない人

効率よく英単語を覚えたい方は、多読だけでなく単語帳など他の学習方法の併用を検討しましょう。

文法やスピーキングは多読では成果が期待できません。参考書やアプリを活用していきましょう。

多読の効果的なやり方

多読学習のポイント
  1. 無理なく読めるレベルの本を選ぶ
  2. 多読は、量を確保する
  3. 楽しんで読める本を選ぶ
  4. 様々なジャンルに挑戦する
  5. 出来るだけ早く読む

1. 無理なく読めるレベルからスタート

多読では、基本的に辞書なしで読み進めることになります。そのため、文中の96-98%程度の単語を知っているのが望ましいとされます(Nation, 2001)

その上で、未知の語に出会った時は、読み流すのではなく、前後の文脈から推測すると効果的な学習になります。

文脈から推測するには、ストーリーを理解できていることが前提です。内容が頭に入ってこない本は本棚に戻してください。

2. 多読は、量を確保する

多読で英語力を上げるには量が必要不可欠です。語彙増強を図る場合を例にすると、2,000~4,000語を習得するのに、100万語の読書が必要になります(Nation, 2001)

これは、100万語の中に20,000~40,000語(2~4%)の知らない語があり、そのうちの10%を習得できるとする仮定に基づいています。

100万語は、1年間で達成しようとした場合、毎日読書すると仮定すると1日あたり約10ページです。

ただし、何がなんでも100万語読まないと効果がないというわけではありません。読解スピードは100万語までいかなくとも向上します。

3. 楽しんで読める本を選ぶ

多読では相当な量を読みこなすことになります。自分自身が楽しんで読める本を選ぶのが大切です。

つまらないと感じた本、難しいと思った本は本棚に戻し、面白いと思える本から手をつけていきましょう。

4. 様々なジャンルに挑戦する

ジャンルによって使われる言葉も違えば、文体も変わります。幅広く読むことで、より多くの表現を吸収できます。

特定のジャンルばかり読んでいると学習できる語彙に偏りが生じますので気をつけましょう。

5. 出来るだけ早く読む

多読の目標は、読解スピードの向上です。そのためには、出来るだけ早く読む意識が必要です。

多読研究について詳しい研究者である Nation は、物語に没頭して続きが気になるとき、最も多読は成果を上げるとしています。続きが気になって仕方がないので、自然と早く読もうとなるわけです。

個人的な体験としては、没頭とまでいかなくとも、なんらかの理由で速読しなければならない環境さえ整えば同様の効果が得られました。

ただし、早く読もうとするあまり、内容が頭に入ってこないと本末転倒なので、そこだけは気をつけてください。

多読教材の選び方

自分のレベルに合った本を選ぶ

多読は辞書なしで読み進めるのが前提です。その上で、わからない単語は文脈から推測します。つまり、ストーリーがわからなければ効果がありません。ちょっと簡単すぎるかなと感じるくらいがちょうど良いです。

通常の本はレベル別になっていないので、多読専用の Graded Readers を使いましょう。

Graded Readers は各出版社が独自にシリーズを展開しています。名作からオリジナルまで、幅広く取り揃えられています。オススメは別記事で紹介しています。

自分の好きなストーリーを選ぶ

多読は膨大な量を読みこなすことになります。自分の好みでない話は読んでいても退屈になってしまい長続きしません。

英語学習のために読んでいるというよりは、本を読みたいから読む、くらいの気概が必要です。

Graded Readersの中には、映画やドラマシリーズをベースとしたものもあります。最初の1冊としてオススメです。

慣れてきたら普段読まないようなジャンルの本にも挑戦すると語彙力の増強にも繋がります。