【教員向け】生成AI (Chat GPT)のガイドラインをわかりやすく解説

この記事では、生成AI (Chat GPT) に関する文部科学省のガイドラインをわかりやすく解説していきます。

文部科学省によるガイドライン(原本)
→初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン(PDF)

この記事の内容は以下の通りです。

記事の内容
  1. 生成AIとは(特徴と注意点, 生成AIの種類)
  2. ガイドラインのポイント(情報活用力育成, 事前指導, リスク管理)
  3. 生成AIの授業での利用例(適切な例, 不適切な例, 長期休業中の対応)
  4. 生成AIの公務での活用例

生成AIの教育利用については、Udemy講座でも解説しています。

講座では、次の2点について学べます。
① Chat GPTを効果的に活用し、授業準備や考査作成、学級業務を短時間で仕上げる方法
② 生徒の生成AI使用への対応方法

生成AI (Chat GPT) とは

生成AIとは、あらかじめ膨大な量の情報から構築した大規模言語モデルに基づき、ある単語や文章の次に来る単語や文章を推測し、「統計的にそれらしい応答」を生成するものです。

文部科学省のガイドラインでは、こうした生成AIについて、次の図を用いて説明されています。

生成AI の特徴と注意点

指示文(プロンプト)の工夫でより確度の高い結果が得られるが、回答には誤りを含む可能性が常にあり、特には事実と全く異なる内容や、文脈と無関係な内容が出力されることもあります。

そのため、対話型生成AIを使いこなすには、指示文(プロンプト)への習熟が必要となるほか、回答は誤りを含むことがあり、あくまでも「参考の一つに過ぎない」ことを十分に認識し、最後は自分で判断するという基本姿勢が必要となります。

生成AIの種類

生成AIには、OPEN AI社が開発した Chat GPT が有名ですが、ほかにも類似のサービスとして Microsoft による Bing Chat、Google による Bard があります。

文部科学省のガイドラインでは、次のようにまとめられています。

それぞれ規約対象年齢が定められています。生徒が利用する場合には保護者の同意が必要となります。

生成AIガイドラインのポイント

文部科学省による生成AIに関するガイドラインのポイントは、以下の3つにまとめられます。

一律の禁止ではなく、情報活用能力育成の視点を含む

ガイドラインでは、生成AIの利用を一律に禁止するものではなく、生成AIを段階的に使いこなしていく視点が含まれています。

「情報活用能力」の観点から、生成AIがどのような仕組みで動いているかという理解や、どのように学びに活かしていくかという視点、生成AIを使いこなすための力を意識的に育てていく姿勢が重要であるとしています。

児童生徒の利用には事前指導が必要

児童生徒に生成AIを利用させる場合は、利用規約の遵守はもとより、事前に生成AIの性質やメリット・デメリットを指導する必要があります。また、小学校段階の児童に利用させることには慎重な対応を取る必要があるとされています。

ガイドラインでは、まずはリスクに対して十分に対策を講じられる学校において、次のような段階的な指導を想定しています。

  1. 生成AI自体を学ぶ段階(生成AIの仕組み、利便性・リスク、留意点)
  2. 使い方を学ぶ段階(より良い回答を引き出すためのAIとの対話スキル、ファクトチェックの方法)
  3. 各教科等の学びにおいて積極的に用いる段階(問題を発見し、課題を設定する場面、自分の考えを形成する場面、異なる考えを整理したり、比較したり、深めたりする場面などでの活用)
  4. 検索エンジンのように普段使いする段階

なお、生成AIの事前指導で欠かせないファクトチェック(事実確認)については、別の記事で詳しく解説しています。

セキュリティやリスク管理が必要

個人情報をAIに入力したり、情報セキュリティ管理者である校長の判断に反した形で利用しないよう注意が必要です。

生成AIに個人情報を入力した場合、機械学習に利用され、将来的に個人情報が出力されるリスクがあります。

また、著作権保護の観点から、既存の著作物の権利を侵害しないよう留意する必要があります。

生成AIの授業での利用例

ガイドラインでは、不適切な利用例と適切な活用例も示されています。また、長期休業中の扱いについても触れられています。

生成AIの利用が適切ではないと考えられる例

  1. 生成AI自体の性質やメリット・デメリットに関する学習を十分に行っていないなど、情報モラルを含む情報活用能力が十分育成されていない段階において、自由に使わせること 
  2. 各種コンクールの作品やレポート・小論文などについて、生成AIによる生成物をそのまま自己の成果物として応募・提出すること (コンクールへの応募を推奨する場合は応募要項等を踏まえた十分な指導が必要) 
  3. 詩や俳句の創作、音楽・美術等の表現・鑑賞など子供の感性や独創性を発揮させたい場面、初発の感想を求める場面などで最初から安易に使わせること 
  4. テーマに基づき調べる場面などで、教科書等の質の担保された教材を用いる前に安易に使わせること
  5. 教師が正確な知識に基づきコメント・評価すべき場面で、教師の代わりに安易に生成AIから生徒に対し回答させること
  6. 定期考査や小テストなどで子供達に使わせること(学習の進捗や成果を把握・評価するという目的に合致しない。CBTで行う場合も、フィルタリング等により、生成AIが使用しうる状態とならないよう十分注意すべき) 
  7. 児童生徒の学習評価を、教師がAIからの出力のみをもって行うこと
  8. 教師が専門性を発揮し、人間的な触れ合いの中で行うべき教育指導を実施せずに、安易に生成AIに相談させること 

実際、生成AIはかなりミスを連発します。Chat GPTの誤回答は別の記事にまとめています。児童生徒にも見分けのつきやすい内容で、5教科別に掲載しています。指導の際にお役立てください。

活用が考えられる例

  1. 情報モラル教育の一環として、教師が生成AIが生成する誤りを含む回答を教材として使用し、その性質や限界等を生徒に気付かせること。
  2. 生成AIをめぐる社会的論議について生徒自身が主体的に考え、議論する過程で、その素材として活用させること
  3. グループの考えをまとめたり、アイデアを出す活動の途中段階で、生徒同士で一定の議論やまとめをした上で、足りない視点を見つけ議論を深める目的で活用させること
  4. 英会話の相手として活用したり、より自然な英語表現への改善や一人一人の興味関心に応じた単語リストや例文リストの作成に活用させること、外国人児童生徒等の日本語学習のために活用させること
  5. 生成AIの活用方法を学ぶ目的で、自ら作った文章を生成AIに修正させたものを「たたき台」として、自分なりに何度も推敲して、より良い文章として修正した過程・結果をワープロソフトの校閲機能を使って提出させること
  6. 発展的な学習として、生成AIを用いた高度なプログラミングを行わせること
  7. 生成AIを活用した問題発見・課題解決能力を積極的に評価する観点からパフォーマンステストを行うこと

長期休業中の課題等について(文書作成に関わるもの)

  1. AIの利用を想定していないコンクールの作品やレポートなどについて、生成AIによる生成物をそのまま自己の成果物として応募・提出することは評価基準や応募規約によっては不適切又は不正な行為に当たること、活動を通じた学びが得られず、自分のためにならないこと等について十分に指導する(保護者に対しても、生成AIの不適切な使用が行われないよう周知し理解を得ることが必要)。
  2. その上で、単にレポートなどの課題を出すのではなく、例えば、自分自身の経験を踏まえた記述になっているか、レポートの前提となる学習活動を踏まえた記述となっているか、事実関係に誤りがないか等、レポートなどを評価する際の視点を予め設定することも考えられる。
  3. 仮に提出された課題をその後の学習評価に反映させる場合は、例えば、クラス全体又はグループ単位等での口頭発表の機会を設けるなど、まとめた内容が十分理解され、自分のものになっているか等を確認する活動を設定する等の工夫も考えられる。

生成AIの公務での活用

ガイドラインでは、教師自身が生成AIに慣れ親しみ、利便性や懸念点、賢い付き合い方を知っておくことが、教育活動で適切に対応する素地を作ることにつながると述べています。

また、生成AIはあくまで「たたき台」として使うのであり、最終的には教員によるチェックが必要です。

児童生徒の指導に関わる業務の支援

  • 教材のたたき台
  • 練習問題やテスト問題のたたき台
  • 生成AIを模擬授業相手とした授業準備

学校の運営にかかわる業務の支援

  • 報告書のたたき台
  • 授業時数の調整案のたたき台
  • 教員研修資料のたたき台
  • HP等広報用資料の構成・たたき台
  • 挨拶文や式辞等の原稿のたたき台

学校行事・部活動への支援

  • 校外学習等の行程作成のたたき台
  • 運動会の競技種目案のたたき台
  • 部活動等の大会・遠征にかかる経費の概算
  • 提携的な文章のたたき台

外部対応への支援

  • 保護者向けのお知らせ文章のたたき台
  • 外国籍の保護者へのお知らせ文章の翻訳のたたき台

生成AIは使いこなせば大きな味方になってくれます。活用術や対応策は Udemyの講座で解説しています。