英検1級・英国修士(TESOL/英語教授法)、現役英語教師のASAKOROKOです。
4技能5領域の育成が強く求められるようになりましたが、避けては通れないのがリーディングの指導です。
単に対訳を配布したり、ひたすら音読を続けていく指導スタイルに、疑問をお持ちの方も多いはずです。
この記事では、中学校や高校の英語コミュニケーションを念頭に、リーディングを中心とした一般的な授業の流れを解説していきます。オールイングリッシュにも対応です。
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- 必要な語彙をインプット
- 本文の内容理解(概要→細部)
- キーセンテンス(文法指導)
- 他技能と関連付け、発展させる
1 リーディングに必要な語彙をインプット
英単語の意味や表現を知らないと、内容理解はできませんよね。内容理解には、テキストの98%以上が既知語である必要があります(Hu and Nation, 2000).
日本の教科書は、新出語句が多すぎて、初見で生徒が読み進められるようになっていません。また、単語の意味を文脈から推測しようとしても、知らない言葉が多すぎて、それも難しいです。
新出語彙は、リーディングに入る前に、指導してしまうのがオススメです。中学校であればフラッシュカード、高校では日英対訳のリストで済ましてしまうことが多いかもしれませんが、オールイングリッシュでも可能です。
All in Englishでできる、オススメの語彙指導方法
次の6ステップです
- 新出語彙のリストを渡す
- 発音を確認する
- 既に知っている単語をチェックさせる
- チェックのついていない単語の意味をペアで確認させる(例:Do you know this word? — I think it means…)2人とも知らない場合はスキップさせる
- 新出語彙の意味を写真などで説明したスライドのコピーを配る
- スライドを見ながら、スキップした語の意味をペアで確認させる
2 内容理解は、全体から細部へアプローチ
読んでいる英文の意味がわからないと、生徒にとっては大きなストレスになります。
先にテキストの全体像を把握させ、その後で細部へとせまると、生徒のストレス軽減になります。
テキストの全体像を把握させる
テキストの概要を把握させるオススメの方法を、難易度順に7つ紹介します。
① イラスト選択・並び替え
本文の内容に関連するイラストを選ばせたり、出来事の順に並び替えさせる方法です。
② True or False
本文の概要に関する簡単なTrue or False 問題に取り組ませる方法です。
③ 表に情報をまとめさせる
本文の内容を表に整理させます。最初は穴埋め形式がオススメです。
【Example】
④ グラフィック・オーガナイザー
図やマインド・マップなどに、本文の情報を整理させる方法です。初めから全て作らせると難しいので、最初は枠や選択肢の用意がオススメです。
【Example】
⑤ Q&A(ペアワーク)
ペアをつくり、ペアのそれぞれに、本文内容に関する違う問いが書かれたリストを渡し、ペアで出題し合います。解答もつけておくとスムーズです。
⑥ トピック・センテンス
段落ごとにトピック・センテンスを選ばせたり、話し合わせる方法です。
⑦ サマリー(要約)
要約はレベルが高すぎると感じた場合、穴埋めにしたり、選択形式にするのがおすすめです。
テキストの細部を把握させる
本文が短い場合は、全体像を把握するだけでも十分かもしれませんが、分量がある場合は細部にも目を向けさせてみましょう。
説明文の場合
論理展開を把握させた上で、主張の根拠を探せたり、筆者の主張と客観的な事実などを分けさせていきましょう。
物語文の場合
出来事の順や登場人物の心情について整理させていきましょう。発問も効果的です。
本文に難しいセンテンスが含まれている場合は、文法解説を組み合わせていきましょう。
3 リーディングと文法指導を組み合わせる
本文の内容理解ができたら、文法指導へと移行していきます。文法的な構造はわからなくても、意味は推測できる状態になっていることが望ましいです。
文法指導は、PPPをベースとして、他の指導方法を組み合わせていくと、スムーズです。
① Presentation 提示
キーセンテンスを提示する段階です。解説は、出来るだけ簡潔にまとめましょう。
② Practice 演習
演習問題を通して、理解を促進します。短時間であれば、口頭でのパターン・プラクティスもオススメです。
パターン・プラクティスは、クラス全体でもできますが、ペアでも可能です。ペアで行わせる場合は、元になる英文と、解答を配布しておきましょう。
パターン・プラクティス(関係代名詞の例)
T: S1 says two sentences. S2, say them in one sentence with a relative pronoun.
S1: Mike is a student. He is from U.S.
S2: Mike is a student who is from U.S.
③ Production 産出
実際に、自力でアウトプットする段階です。ロール・プレイやタスク・ベースの指導法を組み合わせ、新出の文法事項を使わざるを得ない状況に追い込んでいきます。
関係代名詞のような、使わなくてもタスクが達成されてしまうような文法事項では、使用を義務付けていきましょう。
文法指導については、別記事で詳しく解説しています。
4 リーディングと他技能を組み合わせる
リーディング x リスニング
① 内容理解をリスニングで行う
内容理解の True or False 問題などは、リスニングでも行うことができます。テキストのトピックや概要を問う問題の場合、それほど難しくないことも多く、リスニングに適しています。
② シャドーイング
シャドーイングは、リスニング力の向上に効果的な方法です。音の聞き取り能力を高め、ボトムアップでの理解力向上が期待できます(Hamada, 2016)
シャドーイングした音声を録音し、生徒自身に確認させ練習させると効果的です(Nakayama and Suzuki, 2012)
ディクテーションはリスニングに効果的?
ディクテーションが、リスニング力向上に効果があるかどうかは、実は議論が分かれています (Cohen, 2015). ディクテーションは、語彙や文法力を高め、既習事項を定着させる目的で使用するのが、オススメです。
なお、リスニングの詳しい指導方法については、別の記事にまとめています。聞き取りが苦手な生徒がいる場合は、原因を突き止めて対処すると改善しますよ。
リーディング x スピーキング
① リテリング
リテリングは、教科書本文の内容を、生徒が自分の言葉で言い直す活動です。効果的な活動ですが、指導も難しいので、別の記事で詳しく解説しています。
② ペアでQ&A
リーディングした内容について、ペアで話し合う方法です。内容理解問題をペアで出題し合う方法もありますし、トピックについて、生徒自身の考えを言わせる方法もあります。
自分だったらどうするか、賛成か反対か、といった発問は、スピーキングだけでなく、ライティングにも繋げやすくオススメです。
③ ジグソーリーディング
ジグソーリーディングは、読解とスピーキングを組み合わせた活動です。
それぞれのメンバーが異なるテキストを読み、テキストに書かれた情報をグループに持ち寄り、メンバー同士で情報を共有してタスクに取り組みます。
④ スピーチ系の活動
Show & Tell や プレゼンテーション、スキットの作成など、他のスピーキング活動に結びつける方法です。
その他のスピーキング活動は、別の記事で紹介しています。
リーディング x ライティング
① オピニオン・エッセイ
英検のライティング問題のような形式で、生徒に意見を書かせる方法です。英検問題を参考にするとレベルの調整もしやすくオススメです。
【Example】
意見が出てこないことが想定されるクラスでは、事前にペアでのスピーキング活動を入れ、ブレインストーミングしておくのがオススメです。
② 手紙・レポート
物語の登場人物になりきって手紙を書いたり、本文内容をレポートにまとめさせる方法もあります。レポートは、事実と意見、主張と根拠を書き分ける練習としてもオススメです。
5 リーディング指導はここに注意!
英語で内容理解させる
リーディング指導でありがちなミスは、生徒が英文を理解する前に、日本語訳を配布してしまうことです。中学校より高校に多い印象です。
内容理解の前に配布してしまうと、リーディングのトレーニングになりません。
最終的に和訳を配布することはあるかもしれませんが、まずは生徒自身に理解させるようにしましょう。
リーディングの量を確保する
指導時間が限られているので、悩ましいところですが、教科書本文だけでは、トレーニング量が不足してしまいます。
英語ができる生徒は、塾や予備校に通っていたり、英検を受験したりして、より多くの英文に触れています。副教材などを利用して、インプット量を増やしていきましょう。
読むスピードが遅い生徒に要注意
リーディングは、理解力が落ちると、真っ先にスピードが落ちます。
本文が音読できなかったり、読むのが遅い、時間が足りないという生徒は、サポートが必要かもしれません。
読解速度は、読みこなす英文が多いほど速くなります。Graded Readersを利用した多読もオススメです。
6 リーディングの指導力を向上させる方法
リーディングは、英語教師なら避けて通れない指導です。指導する機会も多いので、リーディング指導が上達すると、授業全体が楽になりますし、生徒にとっての恩恵も大きいです。
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リーディング指導を本格的に学ぶならCELTA
リーディングの指導力を高めるには、CELTAなど国際的な指導資格取得コースでの勉強を強く勧めます。
日本の英語教育では、長らく文法訳読で指導されてきました。そのため、リーディング指導に関する研究やノウハウの蓄積が、英語圏に比べて正直少ないです。
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