この記事では、ルーブリックの作り方や公平な評価に向けた現実的な取り組みについて、解説していきます。
児童生徒の評価・成績に関わることなので、しっかりと理解していきましょう。
書籍であれば、『教科の「深い学び」を実現するパフォーマンス評価: 「見方・考え方」をどう育てるか;ミカタカンガエカタヲドウソダテルカ』がおすすめです。
京都大学で、パフォーマンス評価をリードしている西岡加名恵先生が書かれています。
それでは、見ていきましょう!
ルーブリックの作り方は、3ステップ
ルーブリックを作る手順は、次の3つです。
① パフォーマンス課題を設定する
② ルーブリックの種類を決定する
③ 評価の観点と基準を設定する
それぞれ、見ていきましょう。
パフォーマンス課題を設定する
ルーブリックは、パフォーマンス課題ごとに設定するのが一般的です。
パフォーマンス課題では、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」のどれを評価したいのか、どのような作品やレポートが想定されるのか、あらかじめ考えておきましょう。
ルーブリックの種類を決定する
ルーブリックには、包括的ルーブリックと観点別ルーブリックがあります。
包括的ルーブリック
包括的ルーブリックは、全体を一括して評価する形式です。
メリット、デメリット、対処方法は、次の通りです。
【メリット】
作成と採点にかかる時間を短縮できる
【デメリット】
児童生徒からすると、自分の作品のどこに問題があったのか、わかりづらい
【対処方法】
返却の際に、評価の理由や次に何を改善すればいいのか、伝えてあげる
観点別ルーブリック
観点別ルーブリックは、いくつかの観点を設定し、観点ごとに基準を設けていきます。
児童生徒にとっては、改善すべき内容がわかりやすいですが、作成や採点には時間がかかります。
観点を作成する際は、課題達成のために、どのような知識やスキルが必要となるのか、よく考えておく必要があります。
具体的には、次のような方法が考えられます。
- 過去の似たような課題を参考にする
- 試しに類似課題をやらせてみる
- 類似課題の生徒作品を見比べる
- 実践報告を参考にする
いずれの方法で作成するにしても、評価の観点は、授業中に指導することが大前提です。
評価観点にしたにもかかわらず、指導項目に含まれていないということがないよう、気をつけましょう。
評価基準を設定する
評価基準は、5,4,3,2,1のように点数化する方法と、言葉で定義する方法があります。
言葉で定義した方が、評価者間のブレが少なくなります。
具体的かつ客観的な表現で作成することをオススメします。
【プレゼンテーション課題の例】
○アイコンタクトの回数
×聴衆の理解を確認しているか
【レポートの例】
○主張・理由・根拠が一貫している
×わかりすく、説得力がある
ルーブリックの具体例
次の例では、各点数における採点例を提示しています。2回目以降は前回の回答を添えるのも効果的です。
パフォーマンス評価とルーブリックの具体例は、別の記事でさらに紹介しています。
パフォーマンス課題実施後
公平・公正な評価のために、採点時にすぐできるポイントを2つ、ご紹介します。
平均・分布を議論する
ルーブリックを用いて採点したら、平均点や分布について、議論することをオススメします。
あるクラスだけ極端に平均が高かったり、低かったりする場合は、公平な評価となっていない可能性もあります。
その一方で、できる児童生徒が特定のクラスに集まっていた、ということも十分に考えられるので、一律の得点調整は控えるべきです。
ボーダーラインを議論する
点数化したり、A/B/Cと評価する以上、ボーダーライン上に位置する児童生徒は、必ず出てきます。
評価に迷う作品は、同僚と議論することをオススメします。経験上、1人の先生が評価に迷う場合は、他の先生も評価に迷ったり、採点者の間でも評価が割れることが多いです。
採点者によるばらつきを抑える工夫
ベンチマークを記述する
ベンチマークというのは、目標や想定です。ハワイ大学の例を見てみましょう。
4年生のうち76%が”3″もしくはそれ以上で、私たちの期待に応えてくれましたが、私たちが目標としていた80%には届きませんでした。
Stitt‐Bergh, M. (2014). What’s Good Enough? Setting Standards.AALHE 2014 Conference. University of Hawaiʻi at Mānoa.
ここでは、80%というのが、ベンチマークです。具体的に数値で示されていることで、採点者としても「高評価が多いけど大丈夫かな」とか「低評価ばかりだけど…」と不安にならなくて済みます。
ルーブリックを改善する
評価にばらつきが生じる場合、ルーブリックの記述自体に問題がある場合もあります。
改善に向けた手順は、次の通りです。
② 観点ごとに、評価者の人数を整理します。
例えば、ある生徒のレポートを、5人の先生で評価した結果、次のようになったとします。
この場合、観点①は、全員の評価が一致しており、非常に明確です。観点②についても、おおむね一致しており、問題のない範囲でしょう。
一方で、観点③や④では、評価のブレが大きくなっていたり、評価者の間で完全に割れてしまっています。
複数の生徒作品で試してみて、繰り返し同様の結果となるようであれば、ルーブリックの記述自体に問題がある可能性が高いです。表現を見直していきましょう。
まとめ
ルーブリックの作成は、困難も多いです。時間もリソースも多い大学教員ですら苦戦しています。
ですが、パフォーマンス課題を実施し、指導と評価を一体化させる上で、ルーブリックは欠かせません。時間をかけて取り組んでいきましょう。
もっと読み進めたい方には、西岡加名恵先生の『教科の「深い学び」を実現するパフォーマンス評価: 「見方・考え方」をどう育てるか;ミカタカンガエカタヲドウソダテルカ』がおすすめです。