CEFR(セファール) C1徹底解説! 日本人向け勉強法を英語のプロが解説

英検1級・英国修士(TESOL/英語教授法)、現役英語教師のASAKOROKOです。

CEFRは、英語の運用能力に関する国際的な基準です。C1は、上級(Advanced)レベルで、上から2つ目の段階です。資格試験に換算すると、英検1級, TOEIC 945-990点レベルです。

C1は、日本人にも不可能なレベルではありません。B2まで到達したのであれば、十分に達成可能です。

この記事では、欧州評議会の資料などを参考に、C1の特徴や到達に必要な学習量、最短でC1を目指す勉強法について、徹底的に解説していきます。

CEFR C1は、英検1級, TOEIC 945-990 レベル

C1は、上級(Advanced)レベルで、CEFR では上から2つ目の段階です。

資格試験では、英検1級IELTS 7.0-8.0, TOEIC 945-990 に相当します。

CEFR C1レベルの特徴

C1は、英語圏で、大卒従業員として十分に勤務でき、大学院留学もできるレベルです。

CEFRのガイドラインによれば、C1レベルの人には、次のような特徴があります。

CEFR C1の特徴

1. さまざまな種類の難しく、かなり長い文章が理解でき、暗に意味する内容に気づくことができる。

2. 言葉を探す印象を与えず、流暢かつ正確に、自己表現ができる。社会的・学術的・職業的目的のために、言語を柔軟かつ効果的に用いることができる。

3. 込み入った話題について、明確で、よく構成された、詳細な文章を、接続表現やつなぎ語を上手に使って、作ることができる。

CEFR C1レベル の詳細

  • グループディスカッションやディベートにおいて、抽象的で複雑な、なじみのないトピックであっても、第三者間の複雑なやり取りを簡単に理解できます。
  • ほとんどの講義、ディスカッション、ディベートを比較的簡単に理解できます。
  • 使い慣れた製品やサービスの操作手順や仕様など、複雑な技術情報を理解できます。
  • 駅やスポーツスタジアムなど、アナウンスの音質が悪い場合でも、必要な情報を抽出できます。
  • 時事番組、インタビュー、討論番組、雑談番組など、難しいテレビ放送でも提示された議論を詳細に理解できます。
  • 社会生活、職業生活、学問生活の中で遭遇する可能性が高い、広範囲にわたる長く複雑なテキストを詳細に理解することができ、態度や暗黙の意見、表明された意見など、より細かい点を特定することができます。
  • ディスカッションでは、対談者の視点を考慮に入れながら、適切に構成された言葉で体系的に議論を展開し、重要な点を強調し、適切な結論を下すことができます。
  • 複雑な学術的または専門的なトピックに関するより長いレポート、記事、または論文の適切な導入と結論を作成できます。ただし、そのトピックが関心のある分野内にあり、書き直しや改訂の機会がある場合に限られます。
  • 感情的、ほのめかし、冗談の使用を含め、社交的な目的のために言語を柔軟かつ効果的に使用できます。
  • 幅広い慣用表現と口語表現を認識でき、言葉遣いの違いを理解できます。ただし、慣れないアクセントの場合は、時折詳細を確認する必要がある場合があります。
  • フォーマル、インフォーマル、または口語など、社会的状況に合わせて言葉遣い (レジスターとスタイル) を適切に調整し、一貫した形式を維持することができます。

    Reference: Council of Europe. (2020). Common European Framework of Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment.

B2&C2 レベルとの比較

B2 レベルとの比較

C1では、B2 と比べて、幅広く、かなり流暢で正確な運用 が求められます。

B2 と C1 の比較
項目B2C1
分野自身の専門分野専門外の分野を含む
文法基本的な文法形式をある程度正確に使え、さらに複雑な文法形式を使おうと試みている複雑な文法形式であっても、正確に使うことができる
発話の長さある程度の長さと流暢さ言葉を探す印象を与えず、流暢

実際の発話を比較すると、こんな感じです。

B2
Unfortunately for me the situation turned out be opposite to what I thought it was.
(15 words)

C1
Being born and raised in Mexico, I believe her to be the country’s best representative in the world.
(18 words)

I can assure you that the strike isn’t as worrying as you suppose it to be.
(16 words)

Education and Culture DG. (2011). English Profile.

C2 レベルとの比較

C1 はかなり高いレベルですが、C2 と比較すると課題も見えてきます。

C2の方が、言葉を選んでコミュニケーションする力が高く、デリケートな問題を扱ったり、説得力のある議論をすることが求められます。

C1とC2の比較
項目C1C2
分野専門外の分野を含むデリケートな問題を含む
文法複雑かつ正確複雑かつ正確
発話の長さ言葉を探す印象を与えず、流暢言葉を探す印象を与えず、流暢、かつ明確
タスク自然で適切な対処説得力があり、主導権を握って反論できる

C1 スピーキングの実例

C1 レベルのスピーキングについては、Cambridge Assessment によって、実例と審査員のコメントが公開されています。左側の男性は、総合評価3/5で、次のようにコメントされています。

文法 3/5点 複雑な文法形式も含めて、おおむね正確に使えています。意味に影響はありませんが、次のように、正確さに劣る場面も見られます。

And I think they enjoy to play together music
→And I think they enjoy playing together music

I think it’s better to first getting married before you start a family
→ I think it’s better to first get married before you start a family

語彙 3/5点 幅広い適切な語彙を使用して、なじみのあるトピックやなじみのないトピックについて意見交換が出来ています。

談話 3/5点 ほとんど言い淀むことなく、長めの発話が出来ています。同じ内容を繰り返す場面が時折見られました。

発音 3/5点 聞き取り可能で、イントネーション、ストレスも正確です。ただし、th や d, g の発音で、母語の影響が見られます。

コミュニケーション 3/5点 自分の考えを、パートナーの意見と結びつけて話すことができています。ただし、議論に貢献する余地が残る場面も見られました。

日本人にC1は到達可能なのか?

C1のハードルは高いですが、決して不可能なレベルではありません。

例えば、実は英検1級には毎年約2500人程度が合格しています。英検1級の合格率は約10%なので、CEFR B2保持者のうち10人に1人は、C1にステップアップしていることになります。

10人に1人というのは、狭き門であることには変わりありませんが、諦めずに努力を積み重ねれば到達できるレベルとも言えます。

そもそも、最初から諦めて挑戦すらしない人が多いので、もしかしたら、一番必要なのは、絶対に達成する!と信じ、スタートラインを切ることなのかもしれません。

日本人にとってC1が難しい理由

C1到達が難しいのは、求められるハードルが高いこともありますが、それだけではありません。

実際、日本人はかなり不利な状況に置かれています。日常生活で英語を使う機会が極端に少ないからです。

意外かもしれませんが、自分の専門分野にだけ注力していれば良いB2レベルと、分野に関係なく対応を迫られるC1では、日常的に英語を話す機会がないのは大きなハンデになります。

英語圏で生活していると、嫌でも英語が耳から入ってきます。生活していくためには、理解しなければならないので、自然と語彙が増えていきます。

アウトプットも同様です。「英語話せないんです…」とか言えません。話さなければ生活していけません。

よって、日本でC1に到達するには、C1レベルの英語に触れる機会を意図的に作っていく必要があります。

では、どれくらい英語に触れる時間を用意すればいいのか、勉強すればいいのかについて、次に見ていきます。

B2からC1へ 必要な学習量

B2からC1へステップアップするには、200時間のレッスン、もしくは、880時間の独学が必要です

CEFR初級からのレッスン時間初級からの学習時間(独学)
C21,000-1,200---
C1700-8002,200
B2500-6001,320
B1350-400720
A2180-200480
A190-100240

200時間のレッスンというのは、私たちが慣れ親しんでいる中学校や高校での授業数に換算すると、約6~7コマです。レッスンを詰め込めば1年、現実的なペースで2~3年あれば達成できます。

独学の場合も、毎日2~3時間学習すれば、1年で達成が可能です。1日1時間の学習だとしても3年以内に到達できる計算です。

私も1日2~3時間の学習で、丸1年かかりました

C1最短攻略を目指す勉強法

CEFR C1 最短到達を目指す場合のポイントは、次の4点です。

  1. 現在の実力を客観的にチェックする
  2. コミュニカティブ・アプローチを取り入れる
  3. 必要な知識をインプットする
  4. アウトプットで、正確さと流暢さを高める

1. 客観的に実力をチェックする

英語学習の鉄則は、自分のレベルに合った学習を行うことです。そのためには、自分のレベルを客観的に把握する必要があります。

2. コミュニカティブ・アプローチを取り入れる

コミュニカティブ・アプローチというのは、実際に英語が使えるようになることを目指して開発された学習方法です。

英文法や単語のインプットだけでなく、スピーキングやリスニングもバランスよく育成していきます。

実は、CEFR C1到達には、その方が近道です。なぜなら、C1到達には圧倒的な学習量が必要だからです。

そのためには、文法書や単語帳の学習だけでなく、実際に使う機会を増やす方が効果的です。私も積極的に英語を使う機会を増やしてC1に到達しています。

おすすめは、IELTSの開発にも携わっている英国公的機関ブリティッシュ・カウンシルのオンラインコースです。世界トップクラスのカリキュラムと講師陣でCEFR C1へ着実に到達します。

3. C1突破に必要な知識をインプット

C1突破に必要な知識がインプットできる教材を、2冊ご紹介します。

1

English Vocabulary in Use: Advanced Book with Answers
B2からC1に到達するには、1,000-2,500語を覚える必要があります。C1では、意味を知っているだけでなく、正確に使いこなせる必要があります。本書では、豊富な演習で、意味だけでなく、使い方まで学習できます。

\English Vocabulary in Use: Advanced Book with Answers/

2

Advanced Grammar in Use Book with Answers and Interactive eBook
C1レベルの文法項目は、実はB2とほとんど変わりません。ただし、C1では、かなり正確に使いこなす必要があります。仮定法や分詞構文, 不定詞節(e.g. believe O to be, suppose O to be)についても、理解できるレベルでなく、使っていけるようにトレーニングしていきましょう。

\Advanced Grammar in Use Book with Answers and Interactive eBook/

さらに、教材でのトレーニングに加えて、実際に英語を使う機会も増やしましょう。問題集だけで乗り切ろうとすると、英語を知っていても使えない日本人が出来上がってしまうので、注意が必要です。

4. アウトプットで、流暢さと正確さを高める

日本人が最短でC1に到達するためには、次の3つのポイントを意識して、トレーニングするのが効果的です。

ポイント①
受容語彙を発信語彙に変える

C1 では、幅広い話題について、言葉を探す印象を与えずに、発話することが求められます。そのため、実際に使える語彙が必要になります。

私たちが記憶している語彙は、受容語彙と発信語彙に分けることができます。受容語彙は読んだり聞いたりして意味がわかる語彙で、発信語彙は実際に使える語彙です。

基本的に受容語彙は発信語彙より、圧倒的に少ないです。図にすると、こんな感じです。

受容語彙を発信語彙に変えるには、英会話中に上手く言えなかった表現は、とりあえず日本語でメモしておいて、後から時間をかけて英語に直していく方法がオススメです。

その上で、次回以降の会話で、積極的に使っていきましょう。何回も使えば、その分だけ、素早く流暢に使えるようになってきます。

ポイント②
流暢さと正確さを伸ばす

C1では、B2に比べて、さらに長い発話が要求されます。言い淀みなく、時間をかけずに、長い発話をするには、流暢さを高めていく必要があります。

流暢さは、時間さえかければ誰でも伸ばすことができます。なぜなら、英語を使った分だけ伸びるからです。

たまに留学していた人で、もの凄く流暢な人っていますよね。そういう人は、決まって英語を多用していた人たちです。

流暢さは、一度伸び始めると、好循環が生まれます。

最初が大変ですが、がんばりましょう。

ポイント③
フィードバックで、正確さを伸ばす

C1レベルでは、ミスはほとんど許されず、常に正確な発話が求められます。正確さを高めるには、フィードバックが必要です。

ただ話しているだけでは、正確な英語にはならず、ブロークンになってしまうからです。これだと、正確なアウトプットが求められるC1には届きません。

アウトプットには、正確さを向上させる働きがあることが知られていますが、フィードバックが不可欠です(Swain, 1985, 2005)

日常的に外国語を使う環境にあるイマージョン・スクールの子どもたちであっても、聞き取れるようにはなっても、教師からのフィードバックなしには、正確なアウトプットが出来るようになりません(Swain, 1998)

私たちも同じです。アウトプットの機会は確保しなければなりませんし、間違いがあれば、それをちゃんと訂正できる人が、パートナーとして必要になります。C1レベルでは、基本的に、ネイティブ・スピーカーです。

ネイティブ・スピーカーは、知っている表現の幅も広いです。発信語彙を増やすためにも、文法的な間違いがない場合でも、より良い表現がある場合には、教えてくれる人を見つけましょう。